2010年01月16日

東野圭吾

東野圭吾

東野圭吾(ひがしのけいご、1958年2月4日 - )は、大阪府大阪市生野区生まれ(本籍は東区玉造・現中央区)の日本の小説家。

初期の作風は、学園物・本格推理・サスペンス・パロディ・エンターテイメントなど多彩。エンジニア出身であるためか、原子力発電や脳移植などの科学を扱った作品も多い。
その一方でスポーツにも関心があり、大学時代には部の主将を務めていたアーチェリーや中学時代にやっていた剣道、野球、スキージャンプ、スノーボード等を題材にした作品もある。
シリーズキャラクターを必要最低限しか使わないことでも知られていて、『赤い指』『卒業』『私が彼を殺した』『悪意』『眠りの森』などの加賀恭一郎、『探偵ガリレオ』『予知夢』『容疑者Xの献身』の湯川学など数えるほどしかいない。また、同じ主人公でもストーリーはそれぞれ独立しているので、刊行順に読む必要はない。
推理小説というジャンルそのものや出版業界に対する批判・皮肉をユーモアを交えて描いた『名探偵の掟』『名探偵の呪縛』『超・殺人事件』などを発表している。
推理小説に関しては、作品を重ねるごとに徐々に作風が変化している。初期の本格推理のような意外性に重きを置いた作品が減少し、社会派推理小説のような現実的な設定にこだわるようになる。1986年の『白馬山荘殺人事件』では「密室だとか暗号だとかの、いわゆる古典的な小道具が大好きで、たとえ時代遅れだといわれようとも、こだわり続けたい」と語り、本格推理小説の「お約束事」を好む発言をしていた。ところがその4年後には『名探偵の掟』のプロローグとエピローグに当たる『脇役の憂鬱』を発表。そのような「お約束事」に疑問を抱くようになる。1990年の『宿命』で「犯人は誰か、どういうトリックかといった手品を駆使したそういう謎もいいが、もっと別のタイプの意外性も想像したい」と語り、2人に課せられた宿命という意外性を読者に示した。それ以降東野の推理小説は『どちらかが彼女を殺した』『私が彼を殺した』などのフーダニットを重視した作品や、『探偵ガリレオ』『予知夢』などのハウダニットを重視した作品などスタイルを大きく転換することとなり、ミステリーの枠を広げる試みを続けている。近年は、社会性に重きをおいた作品が多い。『容疑者Xの献身』は高い評価と同時に、一部から強い批判も浴び議論を巻き起こした。
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2009年08月24日

『魔球』(☆☆☆☆:小説おすすめ度)

『魔球』(まきゅう)は、1991年に日本の講談社から刊行された、東野圭吾による推理小説。

<あらすじ>
開陽高校硬式野球部の主将である北岡が、愛犬と共に殺害された。事件の影には野球部全体の不仲と、エース投手の須田武志が敗戦した試合で投げたという「魔球」がちらつく。東野青春ミステリーの代表作。

<感想>
高水準の本格推理、サスペンスを書き続けている東野圭吾の「幻のデビュー作」とも言える作品。というのも、オリジナルは江戸川乱歩賞の最終候補まで残った作品だからです。もちろん、加筆修正を行なったのでしょうが、初期の作風のエッセンスが詰まっている秀作と言えます。しかし、この作品は単なる「青春推理」ではないです。登場人物はしっかりと描けているし、昭和40年前後の生活感も存分に伝わってきます。悲しい結末にもかかわらず、爽やかな読後感を覚える東野圭吾作品の特徴も既に現れています。さらに、この作品の執筆時、東野圭吾はまだ20代中盤のはずだから驚きです。東野圭吾恐るべし。改めてそんな思いを抱く小説です。

〜『魔球』、東野圭吾〜
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2009年07月27日

『秘密』(☆☆☆☆☆:小説おすすめ度)

『秘密』(ひみつ)は、東野圭吾の小説である。文藝春秋より1998年9月に刊行された。

<あらすじ>
杉田平介は自動車部品メーカーで働く39歳。妻・直子と11歳の娘・藻奈美との3人暮らし。
ある日、直子の実家に行く為に直子と藻奈美の2人が乗ったスキーバスが崖から転落してしまう。直子と藻奈美は病院に運ばれたものの、直子は死去してしまい、藻奈美は奇跡的に助かった。しかし、助かった藻奈美には直子の魂が宿っていた。
妻の魂が宿った娘と生活していく平介は戸惑いながらも生活を続け、藻奈美は医学部へ入学した。そしてある日、「魂が藻奈美と入れ替わった」と言うのだが。

<感想>
自分が主人公の立場だったら耐えられそうにも、そして立ち直れそうにもないです。実際読み終わってブルーな気分からしばらく立ち直れませんでした。終わってからもう1度クライマックス付近を読み返すことでしょう。そもそも誰が悪いのかと問われたら、誰も悪くない様な、誰もが少しずつ悪い様な。最善の選択なのか、仕方無しなのか、ずるさなのか。そして、ではどうすれば良かったのか、と考えずにはいられません。そして少々、解釈の難しい小説だと感じました。この解釈の難しさは、おそらく、妻・直子の心情がいまいち掴みきれないからだと思います。小説は、常に主人公・平介の視点で進みます。平介の妻・直子の決意、苦悩、秘密…読者がこれらを知るのは、常に平介の視点からです。決意に至るまでの妻・直子の心情は、想像を膨らますしかありません。妻・直子の心情の汲み取り方によって、この小説の解釈が変わってしまいます。そして、妻・直子の心情の汲み取り方が、読了後の後味に繋がります。「妻・直子の心情をどのように汲み取るか?」それが読み手に課せられた問題なのかもしれないです。読んでみて、妻・直子の心情に、思いを馳せていただきたいです。

〜『秘密』、東野圭吾〜
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2009年07月22日

『容疑者Xの献身』(☆☆☆☆:小説おすすめ度)

『容疑者Xの献身』(ようぎしゃエックスのけんしん)は、東野圭吾の推理小説。探偵ガリレオシリーズ第3弾。2003年から文芸誌『オール讀物』に連載され、2005年8月に文藝春秋より出版された。2008年8月に文庫化された。第6回本格ミステリ大賞、第134回直木賞受賞作。また、国内の主要ミステリランキングである『本格ミステリベスト10 2006年版』『このミステリーがすごい!2006』『2005年「週刊文春」ミステリベスト10』においてそれぞれ1位を獲得し、三冠と称された(のちに前出の2賞を取り、最終的に五冠となった)。

<あらすじ>
花岡靖子は娘・美里とアパートで二人で暮らしていた。そのアパートへ靖子の元夫、富樫慎二が彼女の居所を突き止め訪ねてきた。どこに引っ越しても疫病神のように現れ、暴力を振るう富樫を靖子と美里は大喧嘩の末、殺してしまう。今後の成り行きを想像し呆然とする母子に救いの手を差し伸べたのは、隣人の天才数学者・石神だった。彼は自らの論理的思考によって二人に指示を出す。
そして3月11日、旧江戸川で死体が発見される。警察は遺体を富樫と断定、花岡母子のアリバイを聞いて目をつけるが、捜査が進むにつれ、あと1歩といったところでことごとくズレが生ずる事に気づく。困り果てた草薙刑事は、友人の天才物理学者、湯川に相談を持ちかける。
すると、驚いたことに石神と湯川は大学時代の友人だった。彼は当初この事件に傍観を通していたが、やがて石神が犯行に絡んでいることを知り、独自に解明に乗り出していく。

<感想>
数学の証明の手法と事件の解決方法を関連付けるところなど、登場人物と事件が上手くかみ合っていて面白く読めました。数学や物理学が嫌いな人もいるでしょうが、変に専門的な話は出てこず、あくまでも「謎解き」を彩るために使われているだけなので、ご安心を(私も数学嫌いです) 。物語の組み立て方が上手いというか、最後に「あっ」と言わせるトリックもミステリーとしてなかなかのものだと思います。ただ、事件に関わる人物の心理描写は、どちらかというと浅いです。特に主人公の女性の人物描写にはもろさがあり、人間的な魅力を感じることはできませんでした。また、「人を簡単に殺せる人間が、人を純粋に愛することができるのか?」 という本質的な疑問が残りました。でも、あまり深く考えなければとても面白い推理小説であり、読んで損をすることはないと思います。純粋に面白かったです。

〜『容疑者Xの献身』、東野圭吾〜
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2009年07月16日

『流星の絆』(☆☆☆:小説おすすめ度)

『流星の絆』(りゅうせいのきずな)は、日本の男性作家・東野圭吾の推理小説。

<あらすじ>
神奈川県・横須賀市にある洋食屋『アリアケ』の子供である功一、泰輔、静奈。家を抜け出し流星群を見に行ったとある夜中、その間に3人の両親が何者かに刃物で殺害された。彼らは身よりもなく、養護施設で幼少期を過ごした後、相次いで詐欺などにあったことから、強く生きるためにいつしか自らも詐欺を働くようになり、金を持っている男達を騙していく。
事件から14年が経ち、時効を迎えようとしていた折、洋食チェーンの御曹司である戸神行成をターゲットにした3人は、彼の父親・政行が両親が惨殺された時間に家から出てきた人物に似ていることに気付く。店の名物であるハヤシライスの味から、政行が両親を殺害しレシピを盗んだと確信した3人は、行成に接近して政行を陥れるための罠を張っていく。作戦は順調に進んでいた。しかし、一方で静奈は行成に恋心を寄せてしまう…。

<感想>
とても読みやすくラストまで一気に読み終えられます。ただ、ちょっと内容も薄く雑に感じた部分が多かったのが残念です。他の東野圭吾作品である「白夜行」や「容疑者X」「悪意」なんかと比べるとかなり軽い感じです。伏線の張り方や動機づけ、犯行手段といった点でちょっと無理矢理感がいなめなかったです。もちろん、それぞれのキャラの個性は立っていたし、それなりにハラハラドキドキもします。犯人も途中で気付く気付かないは別としても、意外性はあります。三兄妹の人格形成に多大な影響を及ぼすであろう養護施設での生活の描写もなく、あの事件だけを絡めて「絆」を強調されても、ちょっと消化不良です。売れっ子作家さんなので仕方ないかもしれませんが、ちょっと書き急いでるような感じがしました。ただ、読んでるとハヤシライスが食べたくなります。

〜『流星の絆』、東野圭吾〜
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2009年07月11日

『白夜行』(☆☆☆☆:小説おすすめ度)

『白夜行』(びゃくやこう)は、東野圭吾の小説。集英社「小説すばる」1997年1月号から1999年1月号に連載され、1999年8月に刊行され、ベストセラーになったミステリ長篇。

<あらすじ>
19年前(1973年)、大阪で起きた質屋殺し。何人もの容疑者が捜査線上に浮かぶが、決定的な証拠がないまま事件は迷宮入りに。被害者の息子・桐原亮司と容疑者の娘・西本雪穂は、その後別々の人生を歩んでいくかに見えた。だが、二人の周囲には不可解な凶悪犯罪が次々と起きる。

<感想>
総ページ850程度、全13章からなる物語。ライトノベルなら3冊分はあるボリューム。主人公の雪穂と亮司の小学校時代から19年後までが淡々と語られる。なぜ淡々かというと、主人公二人の内面心理の描写が全くなく、他の登場人物の目を通じてしか二人をうかがい知ることができないから
です。加えて、物語はある殺人事件に端を発するが、犯人や犯行方法は途中で暗示され、焦点は事件の解明ではなく今後の展開に移っていく。だからこの物語はミステリーというよりは叙事詩です。読み進めていくごとに、二人の関与がほのめかされ、そして徐々に真相が明らかにされていくにつれ、背筋の凍る思いが募っていく。ですが、真に驚くべきことは、とうとう最後まで二人の内面が一切明かされないことでしょう。稀代の悪女と犯罪の天才。二人はどのように結ばれ、何を目指したのか。
いや、亮司はなぜ雪穂の影で在り続けようとしたのか?これに対して雪穂は亮司に何を与えたのか?雪穂は亮司を愛していたのか?二人に潜む闇はあまりに深く、ありきたりの想像や感情ではとうてい推し量れるものではないです。しかし、こうした思いに対する答えはない。ないのです。だから読後もふとした拍子に雪穂と亮司の物語に思いを馳せてしまう。まさにいつまでも余韻が消えないのです。これが東野ワールドなのでしょう。

〜『白夜行』、東野圭吾〜
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2009年07月09日

『探偵ガリレオ』(☆☆☆☆:小説おすすめ度)

『探偵ガリレオ』(たんていガリレオ)は、東野圭吾の推理小説。探偵ガリレオシリーズ第1弾。1998年に刊行した推理短編小説集。

<あらすじ>
「第一章・燃える(もえる)」
「花屋通り」と呼ばれる人通りの少ない通りで、局所的な火災が発生し、たむろしていた若者が焼死した。焼け跡から変形したポリタンクが見つかったこと、また、周辺にガソリンの臭いが充満していたことから、何らかの弾みでポリタンクに火がついたとして捜査が始まるが、同じ現場に居合わせて怪我を負った連中が、被害者の後頭部から突然火が上がったと証言するなど、火災が発生した原因については手がかりがつかめない。「目の錯覚」「少年たちが火をつけた」という意見も捜査一課にある中、マスコミの唱えたプラズマ説を検証するため、草薙は大学時代の友人、湯川の元を訪ねる。現場を再び訪れると、一人の少女に出会う。その子は事件当日、転んで怪我をしたのを草薙が手助けした際、「赤い糸が見えて、それを探していた」と話していた。その言葉に興味を持った湯川は、ある工場に目をつける。
「第二章・転写る(うつる)」
草薙は中学生の姪の文化祭に出席するが、そこで奇妙なものを見る。「変なもの博物館」と称された陳列品の中に石膏で固めたデスマスクがあり、草薙は胸騒ぎを覚える。そして、血相を変えこのマスクを見る女性がいた。聞くと、この夏に行方不明になった女性の兄に酷似しているというのだ。デスマスクを作ったのは、この学校に通う生徒。二人は偶然、自然公園にある池でアルミ製のマスクを拾い、デスマスクを作ることを思いついたのであった。そしてほどなく、この池からマスクの顔の主である男性の他殺体が発見された。しかし、なぜ現場にマスクがあったのか、どのように生成されたのかは手がかりがつかめなかった。そこで草薙は人体発火事件を解明した友人の物理学者・湯川を訪ねる。湯川は実際に池を訪れ、ある自然現象によってマスクが作られたと考える。一方、事件の方は、容疑者らしい人物をリストアップするも、その人物には被害者が失踪した日に海外へ旅行に出かけているというアリバイがあった。
「第三章・壊死る(くさる)」
スーパーマーケットの経営者が浴槽に浸かったまま死亡しているのが、その息子によって発見された。死体の胸には奇妙な痣が出来ていたが、解剖した結果、痣になっている部分は細胞が完全に壊死していた。死亡した人物からは薬物は検出されず、また、感電死してできる痣でもないことから、死因を特定できず、捜査一課も手が出せなかった。手がかりをつかめないまま草薙は湯川を訪ね、この人物が行きつけにしていたクラブに足を運び、ご贔屓にしていたというホステスに目をつける。このホステスの女は、亡くなった人物に多額の借金を肩代わりする見返りに同居を迫られていた。この状況を避けたいと考えていた彼女は、同僚の男に冗談で殺人の依頼を持ちかける。最初は困惑してその場を去った彼であったが、その後電話で「絶対に病死にしか見えず、仮に他殺だと分かってもその手段が分からない。世界で前例のない」殺害方法を女に提案する。
「第四章・爆ぜる(はぜる)」
三鷹のアパートにて、男性が撲殺されているのが発見された。この部屋から帝都大学理工学部脇にある駐車場の写真が見つかり、捜査に当たっていた草薙はその足で第十三研究室を訪ねる。そこで湯川は、一週間前に湘南海岸で突然火柱が上がり、泳いでいた女性が爆死した事件について学生と議論を交わしていた。これは管轄の神奈川県警でも原因を特定できず、捜査は難航していた。一方、草薙は殺害された男性が8月30日に大学を訪れ、教授の車を尋ねていたことを聞く。また、被害者は1ヶ月前に勤めていた会社を突然辞めていたが、大学の人物からは有力な情報を得ることができずにいた。捜査が暗礁に乗り上げようとしていたとき、草薙は被害者の部屋から海岸近くにある喫茶店のレシートを発見する。それは女性の爆死事件当日のものだった。そして、この女性の経歴を調べるうち、2つの事件につながりがあると考える。また、湯川も海岸を訪れ、爆発の正体を突き止めようとする。しかし、事件はまだ終わっておらず、さらにもう一人の命が狙われようとしていた。
「第五章・離脱る(ぬける)」
7月25日、マンションの一室で女性の絞殺体が発見された。検証を行った草薙は、現場にあった名刺から、被害者が殺害された22日に自宅を訪れたとされる男に話を聞く。すると、男は相手の希望で名刺に書かれていた前日に伺い、事件があった当日は体調が優れなかったため、川の近くに車を止めて休んでいたと答えた。しかし、被害者宅近くの住人が、事件当日に男の乗っていた車を家の前で見たと証言。男は容疑者として任意で聴取を受けることになる。それでも当日のアリバイを主張するが、目立たない場所に止めたとあって誰も証人が現れない。この男が真犯人……その空気が流れる中、一通の手紙が捜査一課に送られる。それは、手紙の主の息子が河原に止めてある男の車を見たというものだった。ただし、その方法が幽体離脱によるものだというのだ。手紙にはそのとき描かれたとされる絵も同封されていた。その少年は事件当日、部屋で休んでいたが、突然体がふわふわして、部屋の外の景色をそのまま絵に描いていた。その不思議な絵を見た手紙の主は当日に仕事仲間にもこのことを知らせる。また、少年の部屋の前には工場の大扉があり、常にしまっている状態で普通の状態では見える位置にはなかった。幽体離脱は本当に起こったのか。捜査一課が混乱する中、間宮係長の命で草薙は湯川の元を訪ねる。

<感想>
本書の面白いところは、“ミステリ”に“科学”を持ち込んだところです。物理学者・湯川の手にかかると、「何の変哲も無い事件?」「単なる偶然が重なった事件?」と思わせる事件に、科学的な解釈が与えられ、事件の真相に迫っていく。この科学的な解釈が与えられていく様は、「なるほどそういうことだったのか!」と思わず納得。“ミステリ”に“科学”を持ち込むあたりは、元エンジニア・東野圭吾らしく興味深いところです。湯川という名前も、ノーベル物理学賞受賞者・湯川秀樹を意識したものなのでしょう。このように様々なところから、東野圭吾が持つ独特の世界観を感じることができます。各エピソードがほどよい長さで読みやすく、広い読者層をターゲットにしていると思われます。現実世界で起こっている、一見不思議な現象も、きちんとした因果関係が存在し、その多くは丁寧に考察することによって解決するのではないかとこの小説を読んでから思うようになりました。何でもかんでも超常現象や前世のせいにしてしまうことは責任転嫁でもあり、その後の生き方に改善する余地を与えなくなってしまうかもしれないのです。不思議な出来事に対し、はなから超常現象と決めつけて思考停止に陥ることがないように、とのメッセージを感じました。本書は本格的な科学推理小説の先駆けです。世代を問わず推奨したい一冊です。

〜『探偵ガリレオ』、東野圭吾〜
posted by 推理小説家 at 22:24 | Comment(0) | TrackBack(0) | 東野圭吾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年07月06日

『名探偵の掟』(☆☆☆:小説おすすめ度)

『名探偵の掟』(めいたんていのおきて)は、東野圭吾の短篇集である。1996年に講談社より刊行され、1999年7月15日に講談社文庫にて文庫化。天下一大五郎シリーズの第1弾で、続篇に『名探偵の呪縛』がある。

<あらすじ>
推理小説にありがちな作品の展開の仕方や、推理作家や読者に対する皮肉を、ユーモアを交えつつ描き出した小説。暗黙の了解となっていて、半ば約束ないし常識になっていることまでも、容赦なく突っ込まれている。主要登場人物2人が、自身が小説上の人物であることを自覚した上で小説世界を一旦離れ、推理小説の問題に言及するなど、メタフィクションの要素を含んでいる。

<感想>
本書は、本格推理小説を飾る「密室」や「トリック」、「アリバイ宣言」、「ダイイングメッセージ」など、今では多くの読者にお決まりの「工夫」・「小細工」をめぐって、名探偵と称される天下一大五郎(彼が「密室アレルギー」という点で読者は失笑している)と(本当はそうでないが)脇役の大河原番三警部との軽快でユーモアに満ちたやり取りを踏まえてのある種の「講義録」のように私には思いました。本書には、既存の推理小説のあり方を作者自身が「メッタ斬る」という姿勢が全面に押し出されるとともに、読者にも本書で扱われている内容を通じて(それらについて)再考してほしいという熱い願望が込められており、大いに読者の「食欲をそそる」内容です。読者が「試されている」といっても過言ではないです。巻末に付されたやや論文的な「解説」(脚注付き)も本書の位置づけや、東野圭吾の作風の変化についての有益な内容を含んでいます。目次をざっとみれば、プロローグからエピローグに至る全12章の内容は、推理小説のモチーフを類型化し、更にそれらについて名探偵と警部が辛辣な意見交換を繰り広げているというプロットそれ自体に読者は心を揺さぶられます。彼らの会話の多くに、私は「腑に落ちる」というか「教えられる」感覚でした。東野圭吾の「挑発的な」本書は怠惰な読者を覚醒させるに違いないです。

〜『名探偵の掟』、東野圭吾〜
posted by 推理小説家 at 20:28 | Comment(0) | TrackBack(0) | 東野圭吾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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