2010年01月21日

山崎豊子

山崎豊子

山崎豊子(やまさきとよこ、本名・杉本 豊子、1924年11月3日 - )は日本の作家。大阪府大阪市出身、堺市在住。

大阪市の老舗昆布商店の家に生まれる。旧制京都女子専門学校(現・京都女子大学)国文学科卒。毎日新聞社に入社し、大阪本社学芸部に勤務。当時、学芸副部長であった井上靖のもとで記者としての訓練を受ける。勤務のかたわら小説を書きはじめ、1957年に生家の昆布屋をモデルに、親子二代の商人を主人公とした『暖簾』を刊行して作家デビュー。翌年吉本興業を創業した吉本せいをモデルにした『花のれん』により第39回直木賞受賞。新聞社を退社して作家生活に入る。
初期の作品は船場など大阪の風俗に密着した小説が多く、その頂点が足袋問屋の息子の放蕩・成長を描いた『ぼんち』であり、市川雷蔵主演により映画化された。さらに1963年より連載を始めた『白い巨塔』は大学病院の腐敗を描いた鋭い社会性で話題を呼び、田宮二郎主演で映画化されたほか、数回にわたりテレビドラマ化された。これも大阪大学医学部をモデルとしており、大阪の風俗が作品への味付けとなっている。神戸銀行(現・三井住友銀行)をモデルとした経済小説『華麗なる一族』も佐分利信の主演で映画化され、さらに2度にわたりテレビドラマ化された。
その後、テーマ設定を大阪から離し、戦争の非人間性など社会問題一般に広げていった。『不毛地帯』『二つの祖国』『大地の子』の戦争3部作の後、日本航空の腐敗した経営をテーマとした『沈まぬ太陽』を発表した。
1991年、菊池寛賞受賞。最近では『文藝春秋』2005年1月号から2009年2月号まで西山事件をモデルとした『運命の人』を連載した。新潮社で『沈まぬ太陽』までの作品を収めた『山崎豊子全集』全23巻が刊行され、2005年に完結。2009年『運命の人』で毎日出版文化賞特別賞受賞。
『大地の子』で引退を考えたが、「芸能人には引退があるが、芸術家にはない、書きながら柩に入るのが作家だ」と新潮社の斎藤十一に言われ、執筆活動を継続している。書斎を「牢獄」と呼び、作品が脱稿すると「出獄!」と言って喜ぶという。

「日本のバルザック」と呼ぶファンがいる一方、盗作疑惑が何度も指摘されている。参考とした資料をほとんど脚色せず作品に反映させたため、盗作との指摘を資料の執筆者から何度も指摘を受けている。よって盗作問題については、「資料の引用」とするか、「盗作」と取るか意見が分かれる所である。
フィクションに実話を織り込む手法は激しい批判を浴び、また『大地の子』をめぐって遠藤誉・筑波大学教授から自著「卡子(チャーズ)―出口なき大地―」に酷似しているとして訴えられる(遠藤誉『卡子の検証』明石書店を参照、なお訴訟自体は遠藤の敗訴が確定した)など、盗作疑惑がしばしば取りざたされた。1968年、『婦人公論』に連載中だった長篇小説『花宴』の一部分がレマルクの『凱旋門』に酷似していることを指摘された事件もその一つである。山崎は、秘書が資料を集めた際に起った手違いであると弁明したが、その後さらに芹沢光治良『巴里夫人』や中河与一『天の夕顔』からの盗用も判明したため日本文芸家協会から脱退した(1969年に再入会)。1973年には『サンデー毎日』連載中の『不毛地帯』で、今井源治『シベリアの歌』からの盗用があるとして問題となった。
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2009年08月16日

『女系家族』(☆☆☆☆:小説おすすめ度)

『女系家族』(にょけいかぞく)は、山崎豊子の小説。『週刊文春』に連載され、1963年、単行本が文藝春秋新社から全2巻で刊行された。1966年に全1冊の新潮文庫版が刊行された(のち、2002年に上下2分冊で再刊された)。

<あらすじ>
大阪・船場の老舗矢島家は代々跡継ぎ娘に養子婿をとる女系の家筋。その四代目嘉蔵が亡くなって、出もどりの長女藤代、養子婿をむかえた次女千寿、料理教室にかよう三女雛子をはじめ親戚一同の前で、番頭の宇市が遺言書を読み上げる。そこには莫大な遺産の配分方法ばかりでなく、嘉蔵の隠し女の事まで認められていた。

<感想>
山崎豊子の俗に「船場もの」と総称される作品。発表後の経過時間を考慮しても現在でも充分面白いです。著者の最も得意とする組織内のドロドロした愛憎劇の名作の一つです。「華麗なる一族」は本書と似た題材を大企業版としてグレードアップさせたものなので未読の方にはおすすめです。遺産相続のゴタゴタを扱っても横溝正史やテレビのサスペンス劇場ならすぐに殺人事件に発展してしまいますが、決してそうはならずに人の欲の皮の張り具合を緻密かつ細密に描けるのが著者の凄みです。この点において著者は同様に悪者ばかりを描いた松本清張の多くの作品を凌駕しています。おそらく著者は松本清張ほどには人間に絶望していないのでしょう。悪女ばかりのなかに無垢の人物が必ず配置されることからもそう考えます。

〜『女系家族』、山崎豊子〜
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2009年08月14日

『華麗なる一族』(☆☆☆☆☆:小説おすすめ度)

『華麗なる一族』(かれいなるいちぞく)は、山崎豊子の小説。1970年3月より1972年10月まで『週刊新潮』に連載され、1973年に新潮社から全3巻で出版された。

<あらすじ>
業界ランク第10位の阪神銀行頭取、万俵大介は、都市銀行再編の動きを前にして、上位銀行への吸収合併を阻止するため必死である。長女一子の夫である大蔵省主計局次長を通じ、上位銀行の経営内容を極秘裏に入手、小が大を喰う企みを画策するが、その裏で、阪神特殊鋼の専務である長男鉄平からの融資依頼をなぜか冷たく拒否する。
阪神特殊鋼の専務万俵鉄平は、米国企業からの増注契約をキャンセルされて危機に陥る。旧友である大同銀行の三雲頭取が多額の融資を了承してくれるが、その矢先、熱風炉が爆発するという事故が出来―。一方、万俵家の次女二子は、総理の縁戚と見合いをしながらも、鉄平の部下である一之瀬に惹かれていく。万俵家に同居する大介の愛人・高須相子が企む華麗な閨閥づくりの行方は。
万俵大介は、大同銀行の専務と結託して、鉄平の阪神特殊鋼が不渡手形を出し、倒産へと追いやらされるさ中、上位の大同銀行との合併をはかる。鉄平は、大同銀行の頭取を出し抜いた専務と父親大介の関係を知るに及び、丹波篠山で猟銃自殺をとげる。帝国ホテルで挙行された新銀行披露パーティの舞台裏では、新たな銀行再編成がはじまっていた。

<感想>
平凡極まりない人生を歩み、閨閥はおろか大企業や権力者のどろどろとした裏工作や根回しとは無縁な私は万俵家の一挙手一投足を丹念にえぐる筆者の文章に対して、他人の庭を特に権力者の庭を覗き見るような不謹慎な興奮があり、一気に読み進めてしまいました。しかし、いかに大企業を切り盛りする権力者であろうと、人間の情があり、過ちがあるさまには、気持ちを強く揺さぶられます。後半部の目を覆いたくなるような惨事においては涙が止まらなかった。私は善の人間たちに強く感情移入したが、最後は憐れな悪の末路に、ざまあみろ、とは言えない哀しさを感じました。万俵家の人々はその資材と権威にいたって私とはかけ離れた存在ですが、どの人物にも共鳴すべき「人間らしさ」があるように思えます。その人間らしさはあたたかく美しいこともありますが、時に愚かで汚く、残忍。でもそれは裸の人間で、現実に限りなく近いのではないでしょうか。赤裸々な人間の姿を描き出している本書。心して手に取るべき傑作です。

〜『華麗なる一族』、山崎豊子〜
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2009年08月09日

『沈まぬ太陽』(☆☆☆☆:小説おすすめ度)

『沈まぬ太陽』(しずまぬたいよう)は、1995年(平成7年)から順次発表された、作家・山崎豊子による3編に渡る長編小説である。

<あらすじ>
本作は、以下の三編からなる。
[アフリカ篇]
作中の現在は1971年(昭和46年)11月13日午後(ケニア時間)より。恩地の年齢は40歳。国民航空ナイロビ支店に勤務する恩地を中心に物語は進行する。国民航空の労働組合委員長として経営陣と対立し、カラチ〜テヘラン〜ナイロビの足掛け8年の左遷人事により「流刑」となった経緯と作中の現在に至るまでが、回想形式で描かれている。一方、大学の同輩であり副委員長として恩地を蔭ながら支えてきた行天は、堂本に取り込まれ、出世街道を歩む。
[御巣鷹山篇]
作中の現在は1985年(昭和60年)8月12日18時24分頃(日本時間)より。恩地の年齢は54歳。10年の左遷に耐え、日本に帰還した恩地は東京本社で閑職に就かされていた。「国航ジャンボ墜落事故」により、救援隊・遺族係となった恩地を中心に物語は進行する。一部実在者を含む遺族の姿がオムニバス形式で随所に挿入されており、他の2編とは異色を放つ。
[会長室篇]
作中の現在は1985年(昭和60年)12月より。恩地の年齢は54ないしは55歳。政府は国民航空の再建を期し、国見正之を会長に据えた新体制をスタートさせた。会長室の部長に抜擢された恩地と会長の国見を中心に物語は進行する。国民航空の腐敗体質の温床となった存在や、その背後の黒幕についても描かれている。

<感想>
日航機事故という史上最大の航空機事故とその周辺を知りたいと思ったのが、この本を手にしたきっかけでした。不遇の主人公、恩地元がアフリカの大地の中で不条理と戦い、またその中で御巣鷹山での事故が起こる。この小説は事実を小説として再構築した作品であるので、はっきりノンフィクションというわけではないし、事実に反する部分に対し多くの反論や疑問の声もあるようです。しかし、この小説の中には事実を元にした多くの人間界の真実が織り交ぜられているように感じます。生々しい御巣鷹山の悲劇と残された遺族の闘いは、涙なしには読めませんが、その周辺の様々な人間模様、企業の中の権謀術策、どれもこれも含めて、人間の中身を強くえぐり出すものです。全篇に渡って素晴しい小説ですが、事実をもとにしたこの小説において事実と違う部分が存在することが指摘されており、その部分を考慮して星4つとします。しかし、人間の真実を描く、といった点において、このようなことはこの小説の価値を下げるものではないと感じます。

〜『沈まぬ太陽』、山崎豊子〜
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2009年07月28日

『不毛地帯』(☆☆☆☆:小説おすすめ度)

『不毛地帯』(ふもうちたい)は、山崎豊子の小説。1973年から1978年まで『サンデー毎日』に連載された。単行本は新潮社から刊行されたが、1976年に前半(4分冊の場合は1 - 2巻、2分冊の場合は上巻にあたる部分)が、1978年には残りの後半部分合わせて全4巻で出版された。1983年11月から12月にかけて、同社から新潮文庫版が刊行された(のち、2009年3月には、5分冊に編成された)。『山崎豊子全集』(新潮社)では12〜15巻に収録している。

<あらすじ>
主人公の壱岐正は陸軍中佐で関東軍参謀。終戦の詔に対し、参謀総長の命令書が出されていない以上武装解除に応じる必要がないと解する関東軍部隊の説得に努めた。日ソ中立条約を犯して侵攻してきたソ連軍に拘置され、重労働の刑を宣告されシベリアに送られる。帰国後参謀としての経歴を買われ商社に入社し航空自衛隊の次期戦闘機選定争いの仕事で辣腕を振るうことになる。後半部では日米の自動車会社の提携、中東での石油発掘プロジェクトにも携わっていく。

<感想>
山崎豊子の豪快な作風が遺憾なく発揮された傑作、初期作品の情緒を愛するものには違う人が書いているのかと思わせるほどですが、本作のような題材を一気に読ませる作品に仕上げる娯楽作家の本領が発揮されています、いかんせん長編に免疫のない人には驚愕の大長編小説です、似た題材を描いた石川達三「金環食」や松本清張でウォーミングアップした方がいいかもしれません。主人公の目を通して見えてくるものは、読んでいるだけでも胸が苦しくなるほど、過酷な体験です。そこから、一体どれほどの逆境に、人間は耐えられることができるのだろう?という素朴な疑問が浮かび上がってきます。彼を支えているものは、家族や同僚、祖国への愛であり、自分の確固たる信条であることが伝わってきます。それを読者に伝えているのは、作者の入念な取材や調査を元にした物語構成の力量だと思います。

〜『不毛地帯』、山崎豊子〜
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2009年07月17日

『白い巨塔』(☆☆☆☆☆:小説おすすめ度)

『白い巨塔』(しろいきょとう)は、山崎豊子の長編小説。1963年9月15日号から1965年6月13日号まで、『サンデー毎日』に連載された。当初、第一審までで完結の予定であったが、読者からの予想外に大きい反響のため、1967年7月23日号から1968年6月9日号にかけて「続・白い巨塔」を『サンデー毎日』に連載した。正編は1965年7月、続編は1969年11月にそれぞれ新潮社から単行本として刊行された。

<あらすじ>
国立大学の医学部第一外科助教授・財前五郎。食道噴門癌の手術を得意とし、マスコミでも脚光を浴びている彼は、当然、次期教授に納まるものと自他ともに認めていた。しかし、現教授の東は、財前の傲慢な性格を嫌い、他大学からの移入を画策。産婦人科医院を営み医師会の役員でもある岳父の財力とOB会の後押しを受けた財前は、あらゆる術策をもって熾烈な教授選に勝ち抜こうとする。

<感想>
医療現場・職場の人間関係・友情・家族・恋愛・人間の生き方、すべてが数十年前に書かれたとは思えない、社会小説の金字塔と呼ばれてふさわしい作品です。全5巻どれもけっこう厚いのですが、ストーリーに引き込まれ長さは感じないで読み進めます。けっこう字も大きいです。この小説は3巻まで書かれてからしばらくブランクをおいて4巻と5巻は続編として書かれたらしいので、昔『白い巨塔』を読んだ人はまだ4、5巻の内容は知らないかもしれません。私の母も昔読んだけど3巻までの内容しか知りませんでした。前半は教授選、誤診裁判を背景に置きそれを取り巻く人間ドラマ、後半はむしろ作者自身がさらに取材・勉強を重ねたと言う裁判の応酬部分が面白かったです。3巻で完結すると、短歌の上の句だけのような感じで、問題提起をして余韻は残すが、財前が勝ち、里見が負けのような形になるので、裁判結果が覆るストーリー展開と、学術会議会員当選の栄光と引き換えの財前の死、という後半の展開も有りかなと思いました。医学界の実態を背景にしつつも、全体としては「告発」的な意味よりは小説として味わった方が良いのでしょう。1点だけ欲を言えば、感情の明暗の動きや、考え方の白黒がデジタルに表現され過ぎていると感じる箇所がありました。内面感情と表層の態度が食い違うシーンの表現や、どちら派か最後まで分からない(八方美人または揺れ動くタイプ)人物設定などがあると、さらに味が出たと思います。もちろん、全体としては大変面白い、作品価値の高い小説です。

〜『白い巨塔』、山崎豊子〜
posted by 推理小説家 at 23:06 | Comment(0) | TrackBack(0) | 山崎豊子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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