2010年01月23日

トマス・ハリス

トマス・ハリス

トマス・ハリス(Thomas Harris, 1940年- )は、アメリカの小説家。テネシー州ジャクソン生れ。テキサス州ウェイコのベイラー大学(Baylor University)卒。

地方紙「ニューズ・トリビューン」の記者ののち、ニューヨークのAP通信社でレポーター兼編集者となり、この間に犯罪の世界に関して貴重な洞察を得、のちに最初の小説を書くきっかけになった。パレスチナゲリラによる、スーパーボール会場への飛行船によるテロという奇想天外なアイデアで、1975年『ブラック・サンデー』を執筆。ベストセラーとなる。なお、同作品は映画化もされたが、パレスチナ問題という微妙な問題を扱っていたため、日本では公開直前に中止に追い込まれる。
1988年、前作『レッド・ドラゴン』(1981年)に続くハンニバル・レクターを主人公とする小説『羊たちの沈黙』を発表、映画化されアカデミー賞を受賞、映画配給会社のオライオン・ピクチャーズ(Orion Pictures Corporation)を倒産の危機から救った。1999年に発表した『ハンニバル』も映画化され、前作以上の興行収入を得た。さらに2005年、レクターの少年期を描いた『ハンニバル・ライジング』を出版し、2007年に映画化された。
大衆の前に姿を現すことがなく、非常に謎の多い人物。30年の作家生活で作品はこれら5作しかないという、寡作な作家。作品は全て映画化されている。
大学時代に出会い結婚した妻ハリエットとの間には一人の娘アンがいる。60年代に離婚。
posted by 推理小説家 at 08:45 | Comment(0) | TrackBack(0) | トマス・ハリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年08月07日

『ハンニバル』(☆☆☆:小説おすすめ度)

『ハンニバル』は、トマス・ハリスの小説。ハンニバル・レクター博士を主人公としたハンニバル3部作の3作目。1999年刊。『レッド・ドラゴン』『羊たちの沈黙』から続く完結編である。

<あらすじ>
連続殺人犯バッファロー・ビルの逮捕を描いた『羊たちの沈黙』から十年後。FBI特別捜査官クラリス・スターリングは部下と共に麻薬組織との銃撃戦のなか、赤ん坊を抱いた組織の女ボスを射殺した。そのことがきっかけでマスコミに叩かれ、FBI上官ポール・クレンドラーの嫉妬と執着も加わりFBI内部で窮地に陥る。
傷心のクラリスの元にハンニバル・レクター博士から慰めの手紙が届いた。イタリアのフィレンツェが博士の居所と知り、逮捕に備えて密かに調査を始める。その一方で博士による診療中、自らの顔面を犬に食わせ、瞼さえも無いままに寝たきりの身にされた大富豪のメイスン・ヴァージャーは、素顔を見せては恐怖に怯える少年の涙を冷蔵保存し、それをすすることで自らを慰めながらも、特別に交配し空腹の時には人間さえも食うように訓練した凶暴な豚を飼育し、機会があれば博士を食わせようと懸賞金をかけて復讐を企てていた。
他方、イタリアの名家出身のパッツィ刑事は、ひょんなことからレクター博士を発見し懸賞金に加えて手柄を立てようと試みるが、逆に博士に見破られ非業の死を遂げる。
イタリアから逃亡した博士とクラリスが必ず接触するであろうというメイスンのもくろみは的中し、博士を拉致することに成功する。捕らえられ拷問を受ける博士は痛みを堪えるべく色鮮やかな記憶の回廊に逃避する。そこへ博士を救出・逮捕すべく現れたクラリス。彼女の奮戦によって博士は窮地を脱するが、怪我を負い博士の治療を受ける。
博士を殺害し損ねたメイスンは、博士によって心の枷を解かれた妹(かつて彼女はメイスンに性的虐待を受けていた)によって殺される。
メイスンと通じ、クラリスを窮地に追い込んだクレンドラーは博士の手に落ち、自分の脳を食わせられるという罰を受けて殺される。
クラリスは博士に治療を受ける中で、父の死という心の傷を博士によって癒され、博士も幼少時に失った妹の存在をクラリスに重ねることにより、彼の心の傷も癒された。クラリスは博士から二度と解けることのない暗示をかけられ、そのまま2人で暮らし始めるのだった。

<感想>
レクター博士は「羊たちの沈黙」で自分を原因と結果という因果関係の中で理解されるのを拒否しました。しかし著者は本書で、レクター博士の幼児体験を明らかにします。これを、レクター博士が超然とした悪でなくなってしまうとして残念がる見解もあるようですが、むしろこれは、レクター博士も決して例外ではあり得ない、という著者の主張でしょう。桐野夏生氏は、文庫版「レッド・ドラゴン」の解説の中で、それでも、レクター博士の食人の理由は明らかではない、と言います。きっと、レクター博士にとって、他人はただの動物性蛋白質で(幼児体験がそれを裏付けるわけですが)、こいつの胸腺が美味しそうだ、と思ったら食べずにはいられないんでしょう。それにしても、レクター博士の生い立ちまで明らかにしながら、彼と対峙するヴァージャーは、ただの滑稽な骸骨にしか思えません。クラリスと対峙するクレンドラーも、「羊たちの沈黙」ではチルトン博士の心の孤独まで丁寧に描いたトマス・ハリスにしては、あまりに表面的な人物造形でしょうか。細部の描写が非常に面白くて、そのときは夢中でページをめっくても、全体的な読後感に何となく物足りなさが残るのは、そういうところに原因があるのかもしれません。

〜『ハンニバル』、トマス・ハリス〜
posted by 推理小説家 at 20:38 | Comment(0) | TrackBack(0) | トマス・ハリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『レッド・ドラゴン』(☆☆☆:小説おすすめ度)

『レッド・ドラゴン』(Red Dragon)は、トマス・ハリスによる小説。本作でハンニバル・レクターが初登場し、『羊たちの沈黙』・『ハンニバル』とともに「ハンニバル・レクター」シリーズとして数えられる。

<あらすじ>
かつて「人食い」ハンニバルこと殺人鬼の精神科医ハンニバル・レクター博士を逮捕したFBIアカデミー教官のウィル・グレアムは、目下世間を騒がせている一家惨殺事件の犯人を捜し求めていた。事件の全体図を把握しかねているグレアムは、なんとしても犯人の人物像を掴むべく、ハンニバルの収監されている療養施設へと赴く。ハンニバルは、異常殺人鬼でありながら極めて高い知能を有しており、檻の中で料理や専門分野の書物を読み、科学雑誌にめざましい論文を執筆していた。ハンニバルのもとには、各地から彼を崇拝する様々なサイコ的人物からの手紙が届く。その中には、殺人鬼の熱烈なファンレターも混じっていた。
殺人鬼は、自分の持つ障害への劣等感や厳格な祖母へのトラウマに悩まされていた。しかしある日出会った、ウィリアム・ブレイクがヨハネ黙示録の情景に基づいて描いた水彩画『大いなる赤き竜と日をまとう女』に魅せられてしまった。殺人鬼は「赤き竜」レッド・ドラゴンを自分と同一視し、いつかは自分も竜になるのだと信じて凶悪犯罪を重ねていた。
グレアムはハンニバルから殺人鬼のヒントを得て犯人を追い求めるが、同時にハンニバルはひそかにその殺人鬼と「文通」していた。

<感想>
犯罪者側を悪の権化としてだけ書くのでは無く、犯罪者にも歩んできた人生があり、その描写にページを惜しみなく費やしている作品が好きです。特に、犯人の幼少期におけるつらい体験は涙を誘います。実際、終盤では自分は犯罪者側の立場になってドキドキしました。また、犯人の変態ぶりもかなりきてます。25年以上前に書かれた作品とは思えません。ダラハイドとレバの触れ合いや、それによって変化するダラハイドの感情の動きも細かく書き込まれており、一人の人間としてのキャラクターを与えています。続編の「羊たちの沈黙」や「ハンニバル」と共におすすめです。

〜『レッド・ドラゴン』、トマス・ハリス〜
posted by 推理小説家 at 20:21 | Comment(0) | TrackBack(0) | トマス・ハリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『羊たちの沈黙』(☆☆☆☆:小説おすすめ度)

『羊たちの沈黙』(ひつじたちのちんもく、原題:The Silence of the Lambs)は、トマス・ハリスの小説。1988年刊。天才的な洞察力を持つ精神科医でありながら人肉嗜好の社会病質者のハンニバル・レクター博士を主役にしたシリーズ小説の2作目。その年に出版された優秀なホラー小説を顕彰するブラム・ストーカー賞を受賞している。

<あらすじ>
FBIアカデミイの訓練生スターリングは、9人の患者を殺害して収監されている精神科医レクター博士から〈バッファロゥ・ビル事件〉に関する示唆を与えられた。バッファロゥ・ビルとは、これまでに5人の若い女性を殺して皮膚を剥ぎ取った犯人のあだ名である。「こんどは頭皮を剥ぐだろう」レクター博士はそう予言した。

<感想>
原作を読んでみると、いかに原作に忠実な映像化がなされていたかを再確認できます。特に本作では脇役であるはずのレクター博士が、主役やストーリーの本筋を食わんばかりに存在感たっぷりに、衝撃的に登場するあたりは圧巻です。また原作である本書は、トマス・ハリスの映像とはまた別の小説ならではの格調高い独特な筆致と、短い章立ての簡潔・鮮明な描写を場面ごとに味わうことができます。決して通俗スリラーに堕すことなく、高いレベルと次元でスリルとサスペンスを盛り上げているあたりはさすがという他ありません。ともあれ、ジョディ・フォスター主演の映画が公開され大ヒットしたことも手伝って、それまで一部ミステリー・ファンにしか知られていなかったサイコ・スリラーというジャンルが、巷にどっと溢れることとなりました。FBIのプロファイリングという独特の捜査法が一般に流布したのも、この作品がきっかけだったのではないかと思います。この作品から、一世を風靡するサイコの時代が始まったのです。

〜『羊たちの沈黙』、トマス・ハリス〜
posted by 推理小説家 at 10:13 | Comment(0) | TrackBack(1) | トマス・ハリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
相互リンク募集中です。こちらのトップページhttp://mainichigashiawase.seesaa.net/へリンクを張った後にコメント(リンクが張られていることが確認できるURLを記載して下さい)を頂ければ、直ちに相互リンクさせて頂きます。