2011年01月01日

『死の壁』

<内容>
ガンやSARSで騒ぐことはない。そもそも人間の死亡率は100%なのだから――。誰もが必ず通る道でありながら、目をそむけてしまう「死」の問題。死の恐怖といかに向きあうべきか。なぜ人を殺してはいけないのか。生と死の境目はどこにあるのか。イラク戦争と学園紛争の関連性とは。死にまつわるさまざまなテーマを通じて現代人が生きていくうえでの知恵を考える。『バカの壁』に続く養老孟司の新潮新書第二弾。

<感想>
なぜ「生命を殺してはいけないか」という問いに対して、著者は「生命は一度殺すと元には戻せないから」とよく答えてきました。これはある意味、非常に医学者らしいドライな答えだった訳ですが、この話をもう少し突っ込んで本書では書いており、人の「死」は周囲の人間に対して回復不可能な影響を与えるものだと話しています。もし、病で寝たきりで死を待つだけの人でも、どういう風に死に向かって残りの命を生きたかという姿を通して、周囲の人に残すものが必ずあるはずだとも言っています。一見ドライな言い方の底に、著者特有のヒューマニズムが感じられる意見だと思いました。ヘタな癒し本よりも、よっぽど生きる力をもらえます。

〜『死の壁』、養老孟司〜
posted by 推理小説家 at 18:56 | Comment(0) | TrackBack(0) | 養老孟司 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『超バカの壁』

<内容>
「今の日本社会には、明らかに問題がある。どんな問題があるか。私はものの考え方、見方だと思っている。そこがなんだか、変なのである」――フリーター、ニート、「自分探し」、テロとの戦い、少子化、靖国参拝、心の傷、男と女、生きがいの喪失等々、現代人の抱える様々な問題の根本が見えてくる。「バカの壁」を超える方法、考え方は自分の頭で生み出す。そのためのヒントが詰まった養老孟司の新潮新書第三弾。

<感想>
解剖学者としての学問的訓練に裏打ちされた視点、長年大学の先生を勤めたことを背景にした見識、虫好き趣味をずっと続けてこられた積み重ねによる蘊蓄、そしてご自身の人生体験にたいする自己省察(父上との死別のことなど)がときどきフイと顔を出すときに、養老氏の話は俄然面白くなります。そういう意味で、知り合いの年配(先輩)の教養人にいろいろ雑談を聞いているような楽しさがあります。逆に言うと、それ以外のあてずっぽうじみた話になると(中国韓国が戦前の日本を手本にしてる、というのは秀逸ですが、都市化と子育ての消失の関係とかちょっと感覚的すぎませんか?など)、消耗な屁理屈こね回すおじさんだな、ということになります。が、それは年配の方の話を聞くときにはつきもののことです。。。そう思ってこの本は読んで楽しめば良いと思います。それ以上を期待するのは、それこそ、自分のまわりに壁を作りはじめてしまっている、ということなんでしょう。

〜『超バカの壁』、養老孟司〜
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『バカの壁』

<内容>
『バカの壁』(ばかのかべ)は養老孟司東京大学名誉教授の著書。新潮新書編集部の口述筆記による著作である。2003年4月10日、新潮新書(新潮社)より刊行された。400万部を超えるベストセラーとなり、同年の新語・流行語大賞、毎日出版文化賞特別賞を受賞。同年4月に創刊されたばかりの新潮新書は、同書のヒットによりブランドイメージを定着させた。

<感想>
誤解されやすいタイトル。〈「話せばわかる」なんて大うそ!〉という帯コピー、それに、カバー見返しの〈いつの間にか私たちは様々な「壁」に囲まれている。それを知ることで気が楽になる〉という紹介文は、著者の意図を理解して書いたのかどうか疑問です。本書は決して、「どうせ『バカの壁』があるのだから、他人を理解なんてできない。ああ、気が楽だ」と、気楽にしてよいと主張するものではないです。本書の主張はこうです。「人はだれしも、世の中には『標準』『常識』があると信じ込んでいる。意見の異なる人を見ると『あいつは非常識だ』と見なして理解しようとしない(『バカの壁』のなせるわざ)。それでいて、自分は標準から外れて個性的になりたいと努力したりする。ところが、われわれの肉体はもともと非常に個性的であって、個性的になりたいというのは意味がない。むしろ反対に、もともと個性的なわれわれは、他の人々、他の民族との間に共通理解をさぐる努力をしなければならない。『自分の信念だけが正しい』と言うのでは共通理解への道は遠い。『人間ならふつう、こういうことをされたらこう感じるはずだ』というように、人間の身体感覚を基本に普遍的価値を探るべきではないか」。〈気が楽になる〉どころか、厄介な宿題をつきつける本です。「人間であればこうだろう」(p.202)という判断をするのも個々の人間です。「人間ならば浮気をするのも仕方ない」と考える人間と、「人間ならば浮気などできないはずだ」と考える人間との間には、やはり理解は成り立たないのではないでしょうか?
全体に、精神訓話のような部分も多いです。また、本書は、著者の話を編集部が文章化したものだそうですが、これでは一字一句に著者が責任を持てません。編集者の「バカの壁」で著者の話の意図が曲がっているかもしれません。

〜『バカの壁』、養老孟司〜
posted by 推理小説家 at 18:43 | Comment(0) | TrackBack(0) | 養老孟司 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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