2014年07月17日

第151回「芥川賞」は柴崎友香氏の『春の庭』 「直木賞」は黒川博行氏『破門』

日本文学振興会は17日、『第151回芥川賞・直木賞(平成26年度上半期)』の選考会を東京・築地「新喜楽」で開き、芥川龍之介賞に柴崎友香氏(40)の『春の庭』(文學界6月号)、直木三十五賞に黒川博行氏(65)の『破門』(KADOKAWA)を選出した。なお、芥川賞の柴崎氏は候補4度目にして受賞を決め、直木賞の黒川氏は候補6度目にして念願の受賞を手にした。今回の吉報を東京・浅草で受けたという柴崎氏。記者会見では芥川受賞に「本当に大きな賞をいただきまして、ありがとうごいます。まだ、信じられない心地なんですが、しっかりとこの賞を受け止めて、小説を書いていきたいと思います」とコメント。一方、直木賞を受賞した黒川氏は、雀荘で麻雀をしながら待っていたといい、「まさか、受賞できると思ってなかったし、5回落ちて“またか”と思いまして、最後はカラオケでも行こうかと…」と笑わせつつも、「本当にありがたいことです」と感謝の言葉を述べた。芥川賞・直木賞は昭和10年に制定。芥川賞は新聞・雑誌に発表された純文学短編作品、直木賞は新聞・雑誌、単行本で発表された短篇および長編の大衆文学作品を対象に優秀作を選定する。前期・第150回(平成25年度下半期・1月16日発表)は、小山田浩子氏の『穴』が芥川賞に、朝井まかて氏の『恋歌』と姫野カオルコ氏の『昭和の犬』が直木賞を受賞している。
候補作品は以下のとおり。

■第151回「芥川龍之介賞」候補作品
戌井昭人『どろにやいと』群像1月号
小林エリカ『マダム・キュリーと朝食を』すばる4月号
柴崎友香『春の庭』文學界6月号
羽田圭介『メタモルフォシス』新潮3月号
横山悠太『吾輩ハ猫ニナル』群像6月号

■第151回「直木三十五賞」候補作品
伊吹有喜『ミッドナイト・バス』文藝春秋
黒川博行『破門』KADOKAWA
千早茜『男ともだち』文藝春秋
貫井徳郎『私に似た人』朝日新聞出版
柚木麻子『本屋さんのダイアナ』新潮社
米澤穂信『満願』新潮社
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2014年05月02日

村上春樹さん短編集、「女のいない男たち」発売

村上春樹さん(65)の短編小説集「女のいない男たち」(文芸春秋)が18日、全国一斉に発売された。今回の新刊は、事前に1回重版され、30万部が発行された。東京・新宿の紀伊国屋書店新宿本店は閉店後、発売に合わせ1階に特設売り場を開設。客たちはカウントダウンをして発売の瞬間を待ち、午前0時の解禁とともに本を手に取っていた。1番に購入した東京都の会社員(32)は「この後タクシーで帰って、家ですぐに読みたい。彼女がいないので、タイトルにも共感できます」と話していた。文芸春秋によると、村上さんの短編集刊行は、2005年の「東京奇譚集」以来、9年ぶり。
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2014年01月24日

売れる本と売れない本、二極化が顕著に

2013年の書籍・雑誌の推定販売額(電子出版を除く)は前年比3・3%減の1兆6823億円で、9年連続で前年を下回ったことが24日、出版科学研究所の調べでわかった。ピークだった1996年の2兆6563億円から17年間で約1兆円減少しており、先の見えない出版不況が続いている。内訳は雑誌が同4・4%減の8972億円で、16年連続の前年割れ。休刊が124点あった一方、創刊点数は前年より12点少ない86点にとどまり、過去最低となった。書籍も同2・0%減の7851億円。村上春樹さんの「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」、近藤誠さんの「医者に殺されない47の心得」、渡辺和子さんの「置かれた場所で咲きなさい」と100万部を超えるミリオンセラーが3作あったが、7年連続のマイナスとなった。同研究所は「売れ行きが一部に集中し、売れる本と売れない本の二極化が顕著になった」と分析している。
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2013年12月16日

今年は小説売れました 実力派ブレークも人気「二極化」

村上春樹さん(64)や百田尚樹さん(57)らのベストセラー小説が話題をさらった今年の出版界。情報会社オリコンが発表した年間ランキングでも文芸書の好調ぶりが裏付けられた。ただ書籍市場の縮小傾向に変わりはなく、ロングセラーと売れない本との二極化が一層進む現状もうかがえる。オリコンの年間総合売り上げトップ10には、期間内の推定売上部数が98・5万部に達した村上さんの長編小説『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』をはじめ、小説4冊が入った。これは調査を始めた平成20年以来最多になる。昨年末から今年11月までの累計売上金額でも文学・ノンフィクション部門は前年比110・1%に上り、好調ぶりは際立つ。背景には実力派作家の大ブレークがある。放送作家出身の百田尚樹さんは、出光興産創業者の破天荒な生涯をドキュメントタッチで描く本屋大賞受賞作『海賊とよばれた男』で読者層を一気に広げた。ソフトな印象のある過去の大賞作の中では異質な「男らしい」物語。価格のはる2巻本という逆風をよそに、期間内の推定売上部数は2巻合計で約137・8万部。人気は旧作にもおよび、映画公開を控えた『永遠の0(ゼロ)』は188万部で文庫部門1位に輝いた。

直木賞作家の池井戸潤さん(50)は人気ドラマ「半沢直樹」の原作に火が付き、シリーズ最新刊『ロスジェネの逆襲』を含めた3作品の年間売り上げは約270万部に達した。手柄は自分のものとし、ミスは部下の責任にする−。銀行員の主人公は、そんな組織の理不尽に立ち向かい、〈倍返し〉を期する。『海賊−』と同様、社会や組織の“常識”に流されず、己の信じた道を邁進(まいしん)する型破りな人物像は、閉塞(へいそく)した時代に爽快感をもって受け止められるのかもしれない。総合2位は『医者に殺されない47の心得』(84・7万部)。がん治療の常識を覆す先駆的な意見が紹介され、医療や健康に関心が高い層に受け入れられた。昨年総合2位だった『聞く力』は今年も81・4万部で3位。『伝え方が9割』(同17位)や『雑談力が上がる話し方 30秒でうちとける会話のルール』(同20位)のように、ビジネスや自己啓発分野では個別の仕事の技術論ではなく、「基本的なコミュニケーションに焦点を当てた本の人気が定着した」(オリコン広報企画部の根田典子さん)といえそうだ。

出版ニュース社の清田義昭代表は「ベストセラー小説が多く生まれたのが今年の特徴で、とりわけ百田さんは多様な題材を書き分ける器用さで読者をつかんでいる。健康への不安など実用書の分野に高齢化社会を象徴する本が並んでいるのも興味深い」と話す。一部のベストセラーに目を奪われがちだが、書籍全体の売上額は伸びていない。出版科学研究所によると、今年1〜10月の書籍の推定販売金額は約6720億円で前年同期比1・3%のマイナスだ。年間販売額は3年連続で前年実績を下回るとみられ昭和62年以来26年ぶりに8千億円を割り込む可能性もある。「飛び抜けて売れる銘柄はあるものの、中くらいのヒットが少ない」と今年を振り返るのは、同研究所の谷清忠さん。発売から1年かけて発行部数を100万部に乗せたシスターの人生指南書『置かれた場所で咲きなさい』などロングセラーは生まれているが、全体を底上げする10万部程度のヒットの広がりがあまり見られないというわけだ。消費を引っ張る生産年齢人口(15〜64歳)は今後も減少が続く上、スマートフォン(高機能携帯電話)などの普及で余暇とお金の争奪戦は激しさを増す。谷さんは「『損をしたくない』という気持ちから読者はシビアに本を選別している。ヒットしやすい映像化の原作でも、手に取ってもらうにはもう一工夫が必要な時代になっている」と指摘する。
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2013年07月18日

直木賞受賞・桜木紫乃さんは金爆の大ファン 鬼龍院とおそろいTシャツで登場

第149回芥川・直木賞選考会が17日、東京・築地の料亭「新喜楽」で開かれ、直木賞は桜木紫乃(しの)さん(48)の「ホテルローヤル」が受賞した。桜木さんはロックバンド「ゴールデンボンバー」の熱烈なファン。東京会館で行われた会見でも、リーダーの鬼龍院翔(29)愛用の模型会社「タミヤ」のTシャツを着用、猛アピールした。芥川賞は藤野可織さん(33)の「爪と目」に決まり、初ノミネートされたマルチクリエイター・いとうせいこうさん(52)の「想像ラジオ」の受賞はならなかった。会見の冒頭。「タミヤ」のTシャツを着ている桜木さんに、当然ながら質問が飛んだ。「なぜタミヤ、着ているんですか?」。桜木さんの答えはシンプル。「ゴールデンボンバーの影響です。このシャツも自分でカスタマイズしました」。ありがとうございました、とアッサリ質問を打ち切った質問者に「え? もっとないんですか?」と物足りなさそうに苦笑いした。

金爆のなかでも、鬼龍院の大ファン。「翔さんの言葉の選び方がスゴイ」と、歌詞から小説のヒントを得ている。「『抱きしめてシュヴァルツ』って曲を聴いて好きなんですが、その歌詞のなかに『慰めて隅々まで』ってあるんです。これは、斬新な言葉だと思いましたね」。さらに担当者からは「賞を取ればゴールデンボンバーのオールナイトニッポンに出られる」との約束まで交わしたそうで、「ここで言っておけば実現しますかね」と笑顔。どこまでも“金爆愛”を貫いた。受賞作「ホテルローヤル」は、ラブホテルを舞台にした連作短編集。実家はラブホテルを経営しており、表題もそのホテルの名前から付けた。父親が、ラブホテル経営に乗り出したのは桜木さんが15歳のとき。資金は全部、借金。「家族全員がホテルに使われているような状況でした」と振り返る。「10代からずっと見てきて、いつかここを舞台にしようと思ってきた。ホテル屋の娘でよかったなと思います」と桜木さん。内容は全部、フィクションだが、自らと家族の苦労が報われた瞬間だった。01年の「ラブレス」に続く2度目のノミネートで得た栄誉。今は北海道江別市に住み、大学3年の息子、高1の娘がいる。「子どもたちには頑張って続ければ必ず何かにつながることを伝えることができた。うれしいです」。声をやや詰まらせながら、この時ばかりは母の横顔を見せた。
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2013年05月30日

第7回日本ケータイ小説大賞優秀賞作品書籍化

ケータイ小説「野いちご」を運営するスターツ出版は5月25日、第7回日本ケータイ小説大賞優秀賞を受賞したsalala著『今までの自分にサヨナラを』を全国書店で販売開始した。価格は1050円。同作品は、生まれつき病気のため車いす生活を送り、恋も夢もあきらめていた高校2年生の主人公が太陽のように明るい男子に出会い、少しずつ変化が現れる、という内容で、著者の実体験を一部交えたものとなっている。また、同社はこれまで販売していた「ケータイ小説文庫」のピンクレーベル、ブルーレーベルに加え、ラブファンタジー作品を扱うパープルレーベルを新レーベルとして創刊。第1弾として、真彩-mahya-著『六花の翼 上』を5月25日から全国書店で販売した。
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2013年05月19日

三代目JSB、日本初!小説に主題歌

7人組ダンス&ボーカルグループ、三代目J Soul Brothersが、日本の音楽史上初めて、小説の主題歌を担当することが16日、分かった。作詞家小竹正人氏の小説デビュー作「空に住む」(講談社)の主題歌「空に住む〜Living in your sky〜」で、6月1日に同書+CDのセット(1600円)で発売(書店のみ)される。「小説主題歌」という仰天プランは、小竹氏の発案だった。代表曲「花火」など、同グループの楽曲を手掛けてきた小竹氏は、小泉今日子、中山美穂、藤井フミヤ、中島美嘉、久保田利伸、EXILEらに楽曲を提供。このたび、自身初の小説執筆にあたり、小説の世界観を音楽でも表現できないかと考えたという。

同作は、都市生活で日常起こり得る「喪失」と「再生」がテーマ。両親の突然の死で、愛猫とともに都心の高層マンションに住むことになった主人公が、喪失感を埋めるように逢瀬(おうせ)を重ね、深みにはまっていく物語で、小竹氏が主題歌の作詞も手掛けた。
<歌詞>ありがとうって言えないまま あなたに逢えなくなってしまったけれど I’m living in your sky この空に 僕はいる 誰よりも愛してた…いつまでも愛してる
信頼する小竹氏から、同曲を提供され、ボーカル登坂広臣(26)は「小説の世界観を感じていただき、感情を込めて読んでいただけるように心を込めて歌いました」とコメント。小竹氏も「小説を読み終えた余韻の中でこの主題歌を聴いたら、物語の世界観がさらに切なく広がってくれると思います」と自信を見せている。
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2013年04月03日

村上さん新作45万部 注文殺到、発売前に重版

今月12日発売の作家、村上春樹さんの3年ぶりの長編小説「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」が45万部でスタートすることが2日分かった。文芸春秋が明らかにした。初版は30万部だが、書店の注文が殺到し発売前に15万部の重版を決めた。平成6年刊の「スローワルツの川」を上回り、単行本では同社最多のスタート部数になるという。新潮社発行の前作「1Q84」の初版は「BOOK1」が20万部、「BOOK2」が18万部で、各5万部を発売前に増刷。「BOOK3」は初版50万部で発売前に10万部が増刷された。
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2013年02月28日

村上春樹氏、3年ぶり長編作に初コメント

今年4月に3年ぶりの新作長編小説を上梓する村上春樹氏が28日、文芸春秋を通じて、新作についてのコメントを発表した。村上氏は、同作について「短い小説を書こうと思って書きだしたのだけれど、書いているうちに自然に長いものになっていきました。僕の場合そういうことってあまりなくて、そういえば『ノルウェイの森』以来かな」と、過去の人気作を引き合いに出している。同氏の長編作品は、2010年4月に発売した『1Q84 BOOK3』以来3年ぶり。文芸春秋は、詳細について「分かり次第発表する」としている。
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2013年02月16日

村上春樹、3年ぶり新作長編を発表へ 4月刊行予定

作家・村上春樹が3年ぶりの新作長編を4月に発表することが明らかになった。16日、大手出版社の文藝春秋が発表した。同社は16日、「村上春樹氏 新刊に関するお知らせ」と題した告知をオフィシャルサイトに掲載。現在のところ、新作が書き下ろしであること以外の情報は出ておらず、詳細は順次発表されるという。

村上にとっては2010年の「1Q84 BOOK3」以来、3年ぶりの新作。また、これまで村上は短編集などを文藝春秋から刊行したことはあるものの、長編小説は講談社・新潮社から刊行されており、文藝春秋から長編小説が刊行されるのは今回が初めてとなる。村上はノーベル文学賞の筆頭候補に挙げられるなど、世界的に知られている小説家。デビュー作の「風の歌を聴け」が小林薫主演で映画化されているほか、2010年には代表作の「ノルウェイの森」がトラン・アン・ユン監督、松山ケンイチ主演で映画化されたことも話題になった。
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2013年01月23日

黒田夏子さんの「abさんご」が品切れ状態 難解さが魅力? 発行9万部に

史上最高齢の75歳での芥川賞受賞が話題になった黒田夏子さんの「abさんご」。その話題性に加え、独自の文体が評判を呼んで2013年1月20日発売の初版発行分は発行元の文藝春秋社でさえ「品切れ」状態となっている。ただ、全文横書きで平仮名を多用し、かぎカッコやカタカナ、固有名詞の一切を排除した実験小説はやはり、十分すぎるほど難解だ。辛口なネットユーザーらの感想も「手強い!」「この作品を楽しまれる方がうらやましい」などが多い。

芥川賞効果はてきめんだった。複数の都内書店を22日に巡ったところ、「abさんご」は売り切れ状態で、文藝春秋社も「初版8000部の在庫は当社にも1冊もないんです」とうれしい悲鳴だ。同社によると、「abさんご」の書籍発売を決めたのは12年9月の早稲田文学新人賞の受賞直後だったため、初版部数は控えめになったという。芥川賞受賞で8000部は完売し、今週末に出荷する2刷の部数は6万部に上る。すでに3刷、2万2000部の追加発行も決まり、累計では9万部に達する予定という。

新聞各紙によると、作者の黒田さんは1937年(昭和12年)に東京で生まれた。早稲田大学教育学部を卒業後、教師や校正者などとして働く傍ら、同人誌で小説を書き続け、63年には『毬』で読売短編小説賞に入選している。作家としての本格的なデビューは昨年秋の早稲田文学新人賞がきっかけだったという。一方、各紙とも黒田さんのこうした経歴には触れていても、芥川賞受賞作の「abさんご」の内容に踏み込んだ記事は見当たらない。新聞やネットであらすじを調べても「黒田さんの自伝的小説で、幼子が成長して両親を見送るまでの物語」など漠然とした記述にとどまっている。

今回、記者が一読して、各紙の紹介があっさりしていた理由が理解できた。あらすじを書こうにも書きづらい内容なのだ。固有名詞やかぎカッコがないため、努力してページをめくっても、ストーリーが薄ぼんやりとしか頭に入ってこない。おまけに横書きのうえ、平仮名が意図的に多用されている。この、平仮名を漢字に変換しながら読み進める作業は、思いのほか大変だった。平仮名が大半を占める文章を前にしては、速読は通用しない。意図的に熟読を強いているとも言えるのだろうか。

早稲田文学選考委員として「abさんご」を新人賞に決めた東大元総長でフランス文学者の蓮実重彦氏は、選評でこう激賞している。「奇跡というべきだろうか、一篇だけ、『ため息』をもらさずに読み終えることなどとてもできない作品がしたたかにまぎれこんでおり、その作品をみたしている言葉遣いと語りの呼吸にはとめどもなく心を動かされた。」「『固有名詞』やそれを受ける『代名詞』もいっさい使わずに、日本語で何が書け、何が語れるか。『個性』的な黒田夏子が直面するのは、おそらくこれまでいかなる作家も見すえることのなかった言語的な現実である。」「誰もが親しんでいる書き方とはいくぶん異なっているというだけの理由でこれを読まずにすごせば、人は生きていることの意味の大半を見失いかねない。」 黒田さんは読売新聞の1月22日付朝刊で読売短編小説賞を「毬」で受けた50年前を振り返り、こうつづっている。

「タミエ(「毬」の主人公)はどこへ行ったのか、やがて作中の子どもにいかなる名もつかなくなり、作中人物すべてにいかなる名もつかなくなる。」「タミエがいたころからの五十ねんを多くのぐうぜんにもたすけられながら生きしのいで、いま受賞でき、出版できることを感謝している。」実験小説とも前衛小説とも称される「abさんご」に挑戦したネットユーザーからは「よく言えば斬新だけど、本好きじゃないと読めないかも」「手強すぎてすぐに白旗揚げました」「もはや古文を呼んでいる感覚」といった声のほか、「ひらがなを脳内で漂わせ漢字に変換しながら…というのは確かに時間はかかるけど、その時間さえ愛おしいような感覚」などの感想が寄せられている。文藝春秋社発行の「abさんご」は表題作のほか、「毬」「タミエの花」「虹」を併録。この3篇については縦書きなので、前からも後ろからも読めるリバーシブル本となっている。
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2013年01月21日

<本屋大賞>冲方丁の「光圀伝」など11作品がノミネート

全国の書店員が「一番売りたい本」を選ぶ13年の「本屋大賞」のノミネート作品が21日発表され、冲方丁さんの「光圀伝」(角川書店)や、第148回直木三十五賞にもノミネートされた西加奈子さんの「ふくわらい」(朝日新聞出版)など11作品が選出された。

本屋大賞は「売り場からベストセラーを作る」をコンセプトに創設され、今回が10回目。「ゴールデンスランバー」(伊坂幸太郎さん、08年)や「告白」(湊かなえさん、09年)、「天地明察」(冲方丁さん、10年)、「謎解きはディナーのあとで」(東川篤哉さん、11年)、「舟を編む」(三浦しをんさん、12年)などが受賞し、多くのベストセラーを生み出した。「舟を編む」が俳優の松田龍平さん主演、女優の宮崎あおいさん共演で4月に映画化されるなど、12年までの大賞受賞作すべてが映像化されている。

ノミネート作は新刊書の書店で働く店員の1次投票で決定する。今回は11年12月1日〜12年11月30日に刊行された日本の全小説を対象に12年11月1日〜13年1月6日に行い、全国463書店598人が投票した。通常は上位10作品がノミネートされるが、今回は10位が総得点タイとなったため、上位11作品が「2013年本屋大賞」のノミネート作品に決定した。4月9日に大賞が発表される。(毎日新聞デジタル)

◇ノミネート作は以下の通り。(敬称略)

「海賊とよばれた男」百田尚樹(講談社)▽「きみはいい子」中脇初枝(ポプラ社)▽「屍者の帝国」伊藤計劃、円城塔(河出書房新社)▽「晴天の迷いクジラ」窪美澄(新潮社)▽「世界から猫が消えたなら」川村元気(マガジンハウス)▽「ソロモンの偽証」宮部みゆき(新潮社)▽「百年法」山田宗樹(角川書店)▽「ふくわらい」西加奈子(朝日新聞出版)▽「光圀伝」冲方丁(角川書店)▽「楽園のカンヴァス」原田マハ(新潮社)▽「64」横山秀夫(文藝春秋)
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2013年01月17日

芥川賞 75歳の黒田夏子さん 直木賞は戦後で最年少、平成生まれ初の朝井リョウさんと、歴史小説の安部龍太郎さん

第148回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が16日、東京・築地の料亭「新喜楽」で開かれ、芥川賞は黒田夏子さん(75)の「abさんご」(「早稲田文学」5号)に、直木賞は朝井リョウさん(23)の「何者」(新潮社)と安部龍太郎さん(57)の「等伯」(日本経済新聞出版社)に決まった。初候補の黒田さんは昭和49年の森敦さん(61歳11カ月)を39年ぶりに更新し最年長受賞者に。朝井さんは戦後最年少、平成生まれで初の受賞者となる。

芥川賞の黒田さんは東京出身で、昨年「abさんご」で早稲田文学新人賞を受賞しデビュー。受賞作は全文横書きの独特のスタイル。固有名詞とカタカナを排し、ひらがなを多く使った独特のやわらかい言葉づかいで、昭和の核家族の営みを浮かび上がらせる。

直木賞で男性最年少ともなる朝井さんは岐阜県生まれ。21年、早稲田大学在学中に小説すばる新人賞を受賞し、デビューした。受賞作では、ツイッターを効果的に使うなど現代的な手法で就職活動に追われる大学生の日々を描く。安部さんは福岡県生まれ。国立久留米高専卒業後、作家を志して上京し区役所職員を経て平成2年にデビュー。受賞作は戦国〜安土桃山時代に活躍した絵師、長谷川等伯を主人公にした歴史小説だ。

芥川賞選考委員の堀江敏幸さん(49)は、黒田さんの作品を「素材と手法のバランスがとれ、洗練された美しい作品」と絶賛。直木賞選考委員の北方謙三さん(65)は朝井さんの作品について「青春小説として非常に斬新。この才気は本物だ」と述べ、安部さんの作品についても「綿密な調査で伝記小説をまとめている」と高く評した。

贈呈式は2月下旬、東京都内で開かれる。賞金は各100万円。
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2013年01月11日

パッとしないのが魅力?東上線、各駅舞台に小説

東京と埼玉を結ぶ東武東上線の各駅を舞台に、沿線住民らの何気ない哀歓を描いた短編小説集「東上線各駅短編集」を、小説家曠野(ひろの)すぐりさん(44)が出版した。東武鉄道が運行するほかの日光線などと比べて、「いま一つパッとしない路線だが、それがかえって魅力」と話している。

曠野さんは2009年には、JR中央線沿線を舞台にした小説を今回の出版社「まつやま書房」から自費出版した。その後、担当編集者との間で、同じ東武鉄道でも伊勢崎線は東京スカイツリー、日光線は日光など沿線固有のイメージがあるのに、東上線は特色があまりないと話題になった。肉卸売会社を営む一方、電車に乗って駅周辺を歩き、思い浮かんだストーリーや情景をメモに書き留めながら書き進めた。東京都東村山市在住だが、妻の実家が東上線沿線にあり、親しみをもっていた。

小説は、志木や坂戸など主に駅ごとに1話完結で、計39編。志木駅の物語は、税理士の男性がホームで、サラリーマンから転身したかつてを回想し始める。埼玉から東京に通勤していた頃、「平凡極まりない住宅地の車窓」を自分の人生に重ね、税理士を目指した。時を経て、今も東上線を利用する男性の、微妙な心の動きを繊細に描写している。また、懐かしい人との再会など、誰にも訪れそうな人生のドラマも詰まっている。
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国内電子書籍ストア利用率、Kindleストアが4割でトップに

株式会社インプレスR&Dは1月9日、電子書籍ストアの利用率に関する調査結果を発表した。調査は、インプレスR&Dが発行する電子出版専門誌「OnDeck weekly」の読者を対象に、昨年12月17日から12月20日までの4日間実施し、有効回答数は582 件。

今回の調査から新たに2012年10月25日に国内でサービス開始したAmazon.co.jpの運営する「Kindleストア」が調査対象となり、利用率40.0%で他サービスを大きく引き離してトップとなった。2位はこれまで首位を守ってきた「紀伊國屋書店BookWebPlus」の13.4%。日本でサービスを開始して約2カ月後の調査となったKindleストアだが、短期間で多くのユーザーを獲得した形だ。

2位以下の電子書籍ストアの利用率には大きな変動がなく、紀伊國屋書店BookWebPlus、Reader Store、BookLive!はそれぞれ利用率を上げており、調査報告では「Kindleストアの日本参入は、既存ストアのシェアを浸食せずに、新たな市場を作り上げた」と分析している。

一方で、楽天kobo は前回調査時の8.5%から1.1 ポイント減の7.4%となった。調査では、「電子ペーパーを採用したkoboの専用リーダー中心であること、iPhoneやiPad、Androidといった端末向けのアプリ対応が遅れたこと」などが影響したと推測している。

なお、調査結果の詳細は、同社が1月11日に発売する「電子書籍ストア利用動向調査.OnDeck 2012年12月調査版」(73ページ、冊子版4万5135円/PDF版3万9900円)に過去4回の調査結果との比較も含めてまとめられている。
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岩波書店100年 読者が選んだ一冊

今年8月に創業100年を迎える岩波書店は、岩波文庫や岩波新書などから、読者の心に残る「この一冊」を選ぶアンケートを実施した。アンケートは昨年5月から9月にかけ、全国の書店で配布したはがきや同社のホームページで行い、9〜95歳の3471人が回答を寄せた。

5つのジャンルで1位になったのはそれぞれ、▽岩波文庫『こころ』(夏目漱石著)▽岩波新書『万葉秀歌』(斎藤茂吉著)▽岩波現代文庫『ご冗談でしょう、ファインマンさん』(R・P・ファインマン著、大貫昌子訳)▽岩波ジュニア新書『詩のこころを読む』(茨木のり子著)▽岩波少年文庫『モモ』(ミヒャエル・エンデ作、大島かおり訳)。いずれも代表的なロングセラーが選ばれた。

同社の担当者は「長く読み継がれている作品が多いのはありがたいこと。5月からの100年記念フェアで配布する小冊子では、ランクインした本に読者が寄せた言葉を紹介するので、楽しみにしてほしい」と話している。
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2013年01月07日

出版社、書店、取次不況の実態…新刊の7割が返品、コンビニでも雑誌売れない

クリスマス商戦真っただ中の2012年末、取次(出版物の卸業)から送られてくる大量の本が店頭を賑わせている書店宛てに、突如2枚のファックスが流れてきた。「武田ランダムハウスジャパン 対応のご案内」。そこには、同社の自己破産を申請に伴う、書店における商品の取り扱い方法などが記載されていた。12年12月14日、武田ランダムハウスジャパンの破たんの報が出版業界を駆け巡った。久々に知名度の高い出版社が倒産に至った。同社はもともと、講談社とアメリカの出版社・ランダムハウスとの合弁会社「ランダムハウス講談社」として設立された出版社。その後、ランダムハウスの経営不振により、両社の合弁が解消される際に、社長の武田雄二氏が全株式を引き取り、10年に武田ランダムハウスジャパンとして再出発していた。しかし、年商13億円を叩き出すような業績のピークはとうに過ぎ、業績は悪化し、今回の措置となった。

少しずつ中小の出版社が廃業に追い込まれていく中で、いよいよ大手も安穏とはしていられない状況が来ていると、業界は騒然としている。ある出版社の営業幹部は次のように言う。「主婦の友社が、どうも厳しいようだ。大日本印刷が親会社である以上、潰れることはないだろうが、決算も赤字で、すでに10人以上もリストラされているほか、経費の25%削減など経営改善を求められているらしい。また、神保町にある別の出版社は親会社から売りに出されてしまっているとも聞いた。来年からは出版計画もシビアになるようだ。

それに、ある講演会で、新人物往来社の飯田日出男社長が下期の出版計画を3割減らしたと話していた。その理由は、本が売れないからだという。そして、今後はもっと売れなくなるとも付け加えていた。その後すぐに、親会社の中経出版との合併を発表した。こうした業界の先を見越しての合併だろう。飯田社長が言う通り、12年は本当に本が売れなかった。新刊書籍が6〜7割返品されるのも当たり前になってしまっている……」

また、別の出版社の営業担当者はこう話す。「ある統計では、出版社の倒産件数が最も多かったのは09年。その後は減少し、11年に起きた大震災の年でも、大きな出版社の倒産はなかった。だが、今年はまた少し増えている。日本出版社の自主廃業が目立ったところだ。これは氷山の一角で、資金繰りで頭を悩ます中小出版社の経営者は多い。後継者もおらず、会社を売りたいと考える経営者も増えているようだ」

これまでも出版不況と言われて、「本が売れない」「本が売れない」と業界は嘆き続けた。だが、それでも当時はまだ余裕があり、どこか他人事のようでもあった。しかし、現状を語る、前出の出版社営業担当の表情は硬く、余裕すら見受けられない。まさに崖っぷちの状況にあるのだ。出版界の統計データを調査する出版科学研究所によると、今年1〜10月期までの書籍・雑誌の推定販売額は前年比3.2%減の1兆4578億円と、大震災の影響で落ち込んだ11年の実績を下回るかたちで推移している。落ち込み幅は書籍よりも雑誌のほうが大きく、書籍は同2.3減、雑誌は同3.9%減ほど。11月期、12月期が11年と同水準で推移したとしても、12年は1兆8000億円には届かず、1兆7000億円台に落ち込むことが予想されている。しかも、3年後には1兆4000億円台にまで減少することまで予測されている。

同研究所の統計データや出版社の状況からみると、最も深刻なのが雑誌だ。東日本大震災の影響で11年は前年比6.6%減と大幅にマイナスとなったうえ、9843億円とついに1兆円の大台を割った。その年よりも、12年の実績は悪いのだ。出版社と取次との仕入れ部数の交渉でも、削減され続けている雑誌は多いようだ。

ある雑誌出版社の営業担当者は嘆く。「まず雑誌は、コンビニエンスストアでさえも売れなくなった。当然、書店でも売れていない。増数したくても、配本する書店が見当たらないという状況だ。アマゾンなどのネット書店くらいしか、もう配本が増える要因はないのかもしれない。それに、売れないからといって、ある大手取次会社のように雑誌の返品上限を決めて、書店ごとの返品数に応じて、次からの入荷部数を削るというやり方は、手荒い気がする。確かに、この取次は主要取引書店をライバルの会社に奪われてしまったにもかかわらず、仕入れ部数は多いし、返品も多かったのだけど……」

だが、利益が出ない苦境に立つのは出版社ばかりではない。取次も窮地に陥っているのだ。例えば、中堅取次のひとつである太洋社がリストラを発表した。60人ほどの希望退職者を募ったうえ、本社を東京・秋葉原に移し、物流機能も埼玉の戸田地区に集約させるというもの。また、11年には栗田出版販売という業界4位の取次が本社の移転と同時に、社員のリストラを行っている。出版社、取次、書店が1冊の本をレベニューシェアする出版界では、取次の取り分は7%と薄利なため、ある程度の売り上げ規模を維持しないと存続できない。

「太洋社のリストラには社員の25%程度、およそ50人が募集に応じたようだ。中堅どころの課長クラス以上がほとんどいなくなる。本当にこれでもつのだろうか? それに同社の専務が反発を買うような発言をしたため、書店がトーハンに帳合変更(取引を変更すること)する動きがみられる。取次の生命線は書店の販売力。このままではどんどん疲弊していくだろう。それと、業績不振を社員のせいにするなど、問題は社長自身にもある」(大手出版社営業幹部)

「明文図書という法律・経済の専門取次が、12月にも自主廃業するのではないかという噂が出た。慌てた同社は11月に『今後の事業方針について』と題した文書を取引先に送付した。そもそも、事業譲渡を模索していたようだが、それが破談となってしまい、今回の噂につながったという。いずれにせよ、経営者自身に事業継続の意思が薄いように思える。やはり、事業規模の小さい取次の経営は苦しいのだろう」(別の出版社営業)

そして、出版社や取次よりも深刻なのは書店。閉店するのは中小の地場書店が多く、年間で1000店前後が減少しているという。ここでは書店の苦境に多くは触れないが、書店店頭の売上データをみていても、前年割れが続いている状況だ。出版社、取次、書店は業界3者といわれ、1冊の本で一緒に飯を食っていく仲間だった。しかし、昨今では、それが困難になってきている。そのひとつの証左が、大日本印刷による書店や出版社への投資である。もう、業界3者外から資金を注入してもらわなければ、商売できなくなりつつあるのだ。それは1冊の本の利益配分にも問題があるのだろうし、その利益配分に合わせた各社の仕事の仕方にも問題があるのだろう。

出版業界でも取次会社主導の返品減少によりマージンがアップする制度など、生き残りの施策を模索している。だが、その手法もまだ手探りで、大きな成果が得られているとは聞こえてこない。「本当に本が売れない時代」は、もうそこまで来ている。年度末に売上の帳尻を合わせるような企業のお遊びなど、やっている暇はもうない。
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<芥川・直木賞>芥川賞…75歳作家、20歳の医大生ら候補

日本文学振興会は、第148回芥川・直木賞の候補作を発表した。芥川は5人、直木は6人がノミネート。芥川では75歳の黒田夏子さん、20歳の医学生、高尾長良(ながら)さんという55歳差の2女性ほかが候補に挙がり、顔ぶれの多彩さが話題を呼びそうだ。

黒田さんは国語教師や校正者の傍ら、ほぼ10年に1作のペースで長編の創作を続け、昨年、候補作「abさんご」で早稲田文学新人賞を受賞して事実上のデビューを果たした。芥川賞に決まれば、1974年に「月山」で受賞した故・森敦さん(受賞決定時61歳)を抜いて史上最年長となる。過去の候補者の記録は残されていないが、候補に挙がった年齢としても過去最高とみられる。

高尾さんは、京都大医学部の2回生。選考会当日の年齢は20歳2カ月で、受賞が決まれば平成生まれでは初、2004年の綿矢りささん(当時19歳11カ月)に次ぐ史上2番目の若さとなる。

候補4度目の舞城王太郎(まいじょう・おうたろう)さんは、一切素性を明かさない「覆面作家」。三島由紀夫賞などを受賞している実力派だ。候補3度目の小野正嗣(まさつぐ)さんも三島賞を受賞しており、フランス文学者、翻訳者の顔も持つ。08年に文学界新人賞を受賞した会社員作家の北野道夫さんは、初めての候補入り。

一方の直木賞は、19年ぶり2回目の候補となる歴史・時代小説のベテラン安部龍太郎さんから、受賞すれば戦後生まれとしては同賞史上最年少となる23歳の新鋭・朝井リョウさんまで、にぎやかな顔ぶれだ。

6人中、初候補は3人。「阪急電車」(単行本・文庫合計123万部)などで知られる人気作家の有川浩(ひろ)さん、小説2冊目でノミネートされた志川(しがわ)節子さん、08年に「通天閣」で織田作之助賞を受賞している西加奈子さん。そのほか、新しい歴史小説の書き手として注目される伊東潤さんも選ばれた。選考会は16日午後5時から、東京都内で開かれる。
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2013年01月01日

2012 今年、私の3冊 7氏が厳選

■文芸評論家・縄田一男

(1)『等伯 上・下』安部龍太郎著(日本経済新聞出版社・各1680円)
(2)『満つる月の如し 仏師・定朝』澤田瞳子著(徳間書店・1995円)
(3)『日御子(ひみこ)』帚木蓬生(ははきぎ・ほうせい)著(講談社・1890円)

今年も昨年に続いて、生命や自然の尊さを訴えた作品に力作が多く、思わず魂がふるえることもしばしばであった。

(1)は、戦国乱世を生き、数々の苦難を乗り越えて、「松林図」を完成させた長谷川等伯(とうはく)を描いた力作。作者は東日本大震災や福島原発の事故を前にして、作家には何ができるかを考え、等伯の姿に再生の祈りをこめてこの一巻をものしたという。ラストの感動は普通ではない。

(2)は、藤原道長の全盛期、仏師・定朝(じょうちょう)が仏像を彫れば彫るほど、この世に御仏(みほとけ)がおわすや否やと、苦悩を深めざるを得ない。仏が実際に必要だった時代は現代に通じ、ある人のために横死した女の野犬に食いあらされた顔に定朝は真の御仏を見る。このくだりは何度読み返しても落涙を禁じ得ない。

(3)は、これまでになかった一味も二味も違った古代史小説の力作。倭(わ)国の和=平和の和という主張に、昨今の中華圏との剣呑(けんのん)な状況や政治・外交不在への批判性がうかがえる。
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2012 今年、私の3冊 7氏が厳選

■評論家・坪内祐三

(1)『昭和のスター 最後の証言』渡部保子著(収穫社・880円)
(2)『安藤昇の戦後ヤクザ史 昭和風雲録』安藤昇著(ベストブック・1575円)
(3)『映画プロデューサー風雲録 思い出の撮影所、思い出の映画人』升本喜年著(草思社・3045円)

渋谷の紀伊國屋書店の映画本コーナーには他の大型書店では見つけることのできない本(新刊)が並んでいる。

渡部保子の(1)は装丁がちょっと(いや、かなり)ダサイが、中身は充実。帯にある津川雅彦の「ここまで書けるのは、今はこの人しかいない」はウソじゃない。

しかし、その紀伊國屋書店にも並んでいなかった(2)(2012年2月刊)をひと月ほど前に神保町の東京堂書店の映画本(の旧刊)コーナーで見つけたときは驚いた。安藤昇はこれまでも各種の自伝を発表しているが、内容の濃さという点でこれが一番ではないか。

最近一番面白いジャンルは昭和30年代の黄金時代とそれに続く40年代の斜陽時代を回想する映画人ものだが、(3)もとても面白かった(今年読んだ映画本の新刊でベスト1だ)。さまざまなスターや監督のエピソードが語られて行くが安藤昇主演、加藤泰監督の『男の顔は履歴書』(共演の伊丹十三も良い)をめぐる秘話にシビレた。
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2012 今年、私の3冊 7氏が厳選

■学習院大学教授・中条省平

(1)『トリュフォーの手紙』山田宏一著(平凡社・2520円)
(2)『闇の国々/闇の国々II』ブノワ・ペータース作、フランソワ・スクイテン画、古永真一・原正人訳(小学館集英社プロダクション・4200円/3990円)
(3)『サブカル・スーパースター鬱伝』吉田豪著(徳間書店・1680円)

(1)映画監督トリュフォーは手紙魔として知られ、彼の死後出た『書簡集』は名編として絶賛された。トリュフォーの親友であり手紙を書きあった著者が、その書簡を自在に引用しながら、トリュフォーの人間性の奥底に迫っている。ともに脳の手術を受けた2人が交わした最後の肉筆の手紙は涙なしで読めない。

(2)フランスマンガの最高峰を印す記念碑的名著。カフカやボルヘスを髣髴(ほうふつ)させる幻想譚(たん)が繰り広げられるが、何よりすごいのは、ギュスターヴ・ドレの銅版画を思わせるスクイテンの絵の超絶技巧だ。日本のマンガも素晴らしいが、世界にはまだまだこんな怪物たちが棲息(せいそく)しているのだ。

(3)著者はインタビューの名人で、芸能界が主なフィールドだが、今回はリリー・フランキー、松尾スズキ、菊地成孔(なるよし)など、サブカルチャーのスターたちに激しく聞きまくっている。サブカルでの成功は一見カッコよく見えるが、40歳過ぎるとあまりに苛酷な人生との苦闘になる。その鬱(うつ)の体験談が恐ろしく、面白い。
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2012 今年、私の3冊 7氏が厳選

■評論家・北上次郎

(1)『暗殺者グレイマン』マーク・グリーニー著、伏見威蕃訳(ハヤカワ文庫・987円)
(2)『アンドロイドの夢の羊』ジョン・スコルジー著、内田昌之訳(ハヤカワ文庫・1092円)
(3)『心のナイフ 上・下(混沌の叫び1)』パトリック・ネス著、金原瑞人・樋渡正人訳(東京創元社・各1995円)

今年は強い印象を残してくれた翻訳エンターテインメントを選んでみた。

(1)近年のアクション小説のベスト1として読まれたい。最初から最後まで、これほど激しいアクションが連続する小説は珍しい。途中一度もだれないから素晴らしい。1980年代に冒険小説を愛読した中高年読者に、ぜひこれをすすめたい。あのときの興奮が蘇(よみがえ)ってくるはずである。

(2)これはSF文庫の一冊だが、アラカン世代に読ませたい傑作『老人と宇宙』の作者なので迷わず手に取ると、いやはや面白い。ジョン・スコルジーは職人作家で、これも娯楽小説の典型といっていい。読み始めたらやめられない冒険活劇SFだ。

(3)少年を主人公にしたヤングアダルトSFファンタジー。あることがきっかけで動物の考えていることがノイズとして聞こえてくる星が舞台の物語だ。次から次に何なのそれ、と驚くようなことが起こるのでどんどん引き込まれていく。全3部作の、これは第1部である。
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2012 今年、私の3冊 7氏が厳選

■千駄木・往来堂書店店長・笈入建志(おいり・けんじ)

(1)『赦す人』大崎善生著(新潮社・1995円)
(2)『寅さんとイエス』米田彰男著(筑摩書房・1785円)
(3)『「弱くても勝てます」 開成高校野球部のセオリー』高橋秀実著(新潮社・1365円)

人間が欲望に忠実に快楽を追求して生きると、周囲との関係や環境全体に不利益が生じる。だからこれからの人間は欲望をセーブしながら生きていかなくてはならない…よく聞くハナシだがこれって本当なのだろうか。よくよく考えてみる必要があるのではないか。

(1)異端の文学者・SM作家、団鬼六の評伝。「ただ遊べ」という哲学に貫かれた波瀾(はらん)万丈の一生は、エゴイズムではなく優しさと赦しに満ちていた。作家に対するイメージが変わった。

(2)時代や社会を形作っているのは人間のはずなのに、それに人間自身が疎外され、知らないうちに追いつめられる。そんなとき、捨て身でしかもユーモアを忘れずに人間性を取り戻そうと頑張ってくれるのが寅さんであり、イエスであるという。イエスが身近に。

(3)ミスによって負けるのではない。ミスを恐れる心が自分を萎縮させ、可能性の爆発を妨げるのだ。へたくそチームの意外な戦略とは? 根拠のない常識を捨て、豪快に振れ。野球は、人生は賭けだ!
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2012 今年、私の3冊 7氏が厳選

■児童文学評論家・諸星典子

(1)『金色の髪のお姫さま チェコの昔話集』カレル・ヤロミール・エルベン文、アルトゥシ・シャイネル絵、木村有子訳(岩波書店・1995円)
(2)『大きな音が聞こえるか』坂木司著(角川書店・1995円)
(3)『その場小説』いしいしんじ著(幻冬舎・1575円)

(1)訳者が子供の頃に虜(とりこ)になった美しい挿画(そうが)のままに安定した語り口で語られる詩人エルベンの昔話集。どうやらチェコのハエは金髪のお姫さまを見分けることができるらしい。典型的な昔話の様式美の中の予想を裏切る言動に異国の文化を思う。

(2)日常に苛立(いらだ)ちふてくされた高校生が一念発起し、資金を稼ぎ、両親を説き伏せ、アマゾンを逆流する「ポロロッカ」に乗るために一人旅立つ。周囲に働きかけ、その反動で自らの殻を壊し、物事の見方を変えていく少年の愚直なまでの成長物語には、肯定的に前へ進むことの当たり前さを思い出させる力がある。

(3)人々は時間と場所の交点に集まり、物語はそこから生まれる。著者が「その場」で書きながら朗読した54話にはどれも、廃虚の先のイメージがあるように思われる。実用品やありきたりな言葉に置き換えられた物どもはどこへ消えたのか。あの大きな地震の後で変わったのは何より「見て考える」やり方かもしれない。
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2012 今年、私の3冊 7氏が厳選

■編集者・光森優子

(1)『双頭のバビロン』皆川博子著(東京創元社・2940円)
(2)『幽女の如(ごと)き怨(うら)むもの』三津田信三著(原書房・1995円)
(3)『あたたかい水の出るところ』木地雅映子著(光文社・1575円)

(1)生まれたとき同じ肉体を共有し、切除手術を受けた結合性双生児。引き離されたそれぞれがたどる数奇な運命を、聖林(ハリウッド)と上海という2つの魔都を舞台に描く壮麗な物語。光と影のように対照的な双子が織り成す華やかで残酷な世界と、つきまとう謎。紙を埋める言葉の魔力に酔いしれ、翻弄される。豊穣(ほうじょう)な物語世界を体現した造本も美しい。

(2)戦前から戦後にかけて3軒の遊郭で起きた花魁(おいらん)の不可思議な連続身投げ事件。ささやかれる幽霊の噂と不気味な現象、遊郭の暗部や女たちの悲哀が丁寧に描かれ、魅了される。叙情的な空気と論理的な謎解き、読後の余韻まで見事に調和した一冊。特に少女の視点から語る第1部が圧巻だ。

(3)温泉をこよなく愛するマイペースな女子高生の成長物語。お気楽でユーモラスな語り口とは対照的に彼女を取り巻く状況はかなりシビア。すさんだ息苦しい家を飛び出し、自分を大切にする生き方をするための選択は痛快で、温かい希望を与えてくれる。
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青空文庫に柳田国男「遠野物語」、吉川英治「私本太平記」など登場

著作権が切れた文学作品などを無償公開する「青空文庫」に1月1日、同日で著作権保護期間が終了した柳田国男や吉川英治、室生犀星ら12人の作品が公開された。元日に公開されたのは秋田雨雀「三人の百姓」、飯田蛇笏「秋風」、小倉金之助「黒板は何処から来たのか」、西東三鬼「秋の暮」、妹尾アキ夫「凍るアラベスク」、土谷麓「呪咀」、中谷宇吉郎「雪」、正木不如丘「健康を釣る」、正宗白鳥「心の故郷」、室生犀星「抒情小曲集 04 抒情小曲集」、柳田国男「遠野物語」、吉川英治「私本太平記 01 あしかが帖」。各作家の他作品も公開に向けた作業リストに登場している。

著作権が保護される期間は著作者の死後50年。期間の計算を簡便にするため死亡の翌年の1月1日から起算されることから、保護期間が終了するのも元日となる。青空文庫は、著作者の死後の著作権保護期間を70年に延長しようという動きに反対し、2005年から、パブリックドメインとなった作品を元日に公開している。青空文庫の呼び掛け人、富田倫生さんはサイトで、吉川英治作品の公開についての期待が高かったことなどを述べている。電子書籍とタブレットが人気となった昨年は、青空文庫の利用者が増えたことを実感したという。

電子書籍ストアに青空文庫のファイルが公開されると「水増し」などと指摘されたことに対し、「仲間内では、以来、青空文庫を「水」と呼ぶことが流行った」という。「私たちの活動の目的は、著作権の切れた作品を、使い回しの効くテキストに仕立てて、社会の資源として利用してもらうことだ。四方八方に流れて、そこで人を潤そうと目指すのだから、水は青空文庫のあり方にふさわしい」

環太平洋経済連携協定(TPP)参加問題で、再び著作権保護期間の延長を要求される可能性が出てきている。富田さんは「だが、たよりなく、まどろこしくは感じられても、デジタルアーカイブでできることを積み上げ、たくさんの人とともにその成果に潤され、その意義を強く自覚することこそ、もっとも根底的な延長への批判たりうるのではないかと思う」と記している。
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2012年12月27日

文芸 現実と対峙 小説の力

師走の大型書店で、カルチャー総合誌「ブルータス」(マガジンハウス)の12月15日号が異彩を放っていた。〈一度きりの文芸誌〉と銘打ち、目次は文芸誌と同じ観音開き。出版社の垣根を越えて計8誌が協力し、伊坂幸太郎さん(41)や舞城王太郎さん(39)らの単行本未収録作品など11編を掲載する。「文芸誌を束ねることで“事件”を起こしたい」。遊び心も手伝って実現した特集号だが、西田善太編集長(49)は掲載作を読み通した今、「小説や物語が何かを救うことがあるんだと確信できた」と話す。東日本大震災後の喪失感に、政治の混迷と経済の停滞が追い打ちをかける。そんな現実の複雑な様相を描く、小説の力を感じさせる作品に今年も出合えた。

村田喜代子さん(67)は震災直後に子宮がんの疑いを宣告された自身の体験を短編集『光線』(文芸春秋)に結実させた。原発事故のニュースが駆けめぐる中で、放射線治療を続けることへの言葉にしがたい違和感を、情緒に流されないひょうひょうとした筆致でつづる。児童文学やアニメの引喩をちりばめた高橋源一郎さん(61)の短編集『さよならクリストファー・ロビン』(新潮社、谷崎潤一郎賞)は、子供の視点から喪失感に覆われた時代の空気を描き出した。

空襲をくぐり抜けた古井由吉(よしきち)さん(75)は昨年、震災後の小説の一つのあり方として時間軸をさかのぼり、「現在=震災後」を相対化する視点を挙げていた。執筆時期は3・11と前後するかもしれないが、何代にもわたる家族の歴史を掘り下げ、自らの足元を見つめ直す作品が多かった気がする。水村美苗(みなえ)さんの『母の遺産 新聞小説』(中央公論新社、大仏次郎賞)は老いた母の介護に苦しむ50代女性の雑多な日常を起点に、女3代の歴史を語り起こす。少女の米国留学体験を通じて日本の戦後を問い直したのは赤坂真理さん(48)の『東京プリズン』(河出書房新社、毎日出版文化賞・司馬遼太郎賞)。少女時代と45歳の「私」の対話が導入され、戦争責任という骨太なテーマの影に、現在の「私」自身を問い直す視点が浮かび上がる。

じっくり力量を蓄えた遅咲き新人のデビューも相次いだ。国語教師や校正の経験を積み重ねた黒田夏子さん(75)は固有名詞を排し全文横書きという「abさんご」で早稲田文学新人賞を受賞。雑誌「考える人」の編集長を務めた松家仁之(まさし)さん(54)の『火山のふもとで』(新潮社)は建築をモチーフに、ゆったりとした時間の流れを描き、物語にひたる悦びを教えてくれる。

“事件”といえば、田中慎弥さん(40)の「もらって当然」発言が波紋を呼んだ1月の芥川賞決定直後の会見だ。奔放な父と対峙(たいじ)する17歳の息子を描く受賞作『共喰い』(集英社)は、父子の相克というデビュー以来の主題が切りつめた文章で投げ出され、作家の洗練を感じさせた。もう一人の受賞者、円城塔(とう)さん(40)は早世した伊藤計劃さんの絶筆を書き継いだ『屍者(ししゃ)の帝国』(河出書房新社、日本SF大賞特別賞)を発表。死者をよみがえらせる近未来の物語は、生死のはざまを身近に感じる不安の時代に読者に響いた。

知的なユーモアとゴシップを織り交ぜた市民小説を根付かせた丸谷才一さん(享年87)の訃報は大きな喪失感を抱かせた。古今東西の文学を自在につなぐ書評やエッセーで、文学と読者の距離をぐっと縮めた。〈小説が藝術作品として磨かれすぎるとき、それは本来的な魅力を失ひ、素朴で荒々しい生命力の欠けたものになつてしまふ危険がある〉(「近代文学」昭和28年3月)。冒頭の「ブルータス」の企画からは、読者離れに悩む文芸誌の危機感も見てとれる。当時27歳だった丸谷さんの指摘の重要性は、むしろ増しているのかもしれない。
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いよいよ市場も本格始動か〜“電子書籍”で振り返る2012年

2010年にシャープとソニーが国内電子書籍市場に参入して“電子書籍元年”と話題を呼んだものの、2011年にはいったん落ち着いた感のある電子書籍市場。大きく動いたのは、やはりAmazonの参入だろう。2012年に入って6月にAmazon.co.jpがサイト上で「Kindle」の近日発売を予告し、それを追うように同じ6月、楽天が「kobo」の発売を楽天サイトで予告した。製品発売時期では楽天が7月、Amazon.co.jpが11月に国内製品を投入。楽天は2011年に買収したカナダKobo社の既発売モデル、Amazon.co.jpは米国で発表済みのモデルを投入した形だ。いずれも大きな話題となり、それぞれの顧客で電子書籍の購入者層を広げた。

良くも悪くも話題になった、普及の立役者「楽天kobo」

ネット流通最大手として、参入時期が注目されていたAmazon.co.jpと楽天だが、電子書籍リーダー端末の発表と発売は楽天の方が早かった。楽天は「kobo Touch」を7月2日に発表、7月18日に発売した。発売前日には三木谷浩史社長が自ら丸善店頭で来店者にkobo Touchを売り込むという力の入れようだった。楽天は2011年11月にカナダのKobo社買収を発表しており、kobo社を通してワールドワイドのコンテンツホルダーや専用端末の小売業者などとのネットワークも手に入れている。三木谷社長はKoboの発表会で、「日本の優れた文化を海外に広めたい」として、日本のコンテンツ市場を楽天グループの販売網を通じてワールドワイドに展開する手助けがしたいと強調した。楽天koboは7000円台という、それまでの電子書籍端末の価格と比較すると大幅に安価な1万円を切る価格付けを行い、発売キャンペーンでの特典やポイントを使ってさらに低価格で購入できるとあって、電子書籍リーダー端末市場の拡大に貢献した。しかし、購入者層が広がり、デジタルガジェットの扱いに慣れていない層も購入したことで、初期設定がわからないというユーザーも多く、初心者に配慮したマニュアルがないと批判もされた。楽天ではこうした批判を受け、11月発表の「kobo glo」「kobo mini」では手順をわかりやすく説明するマニュアルを添付している。また、楽天が当初発表していたサービス開始時の日本語書籍点数は3万点だったが、実際のサービス開始時には約2万点だったことや、ジャンルの分類がきちんとなされておらず、楽譜や、後にはWikipediaの著者紹介までが1冊の書籍として公開されたことで、「点数水増し」との批判も受けた。

評判も上々、安定したスタートを切った「Kindle」

一方、Amazon.co.jpは6月のサイト予告から4カ月あまり経過した10月24日、ようやくKindle端末の日本国内販売を発表した。発表したのは、「Kindle Paperwhite」、それに無料の3G通信回線が入った「Kindle Paperwhite 3G」、7インチのカラー液晶を搭載し、Android OSをベースとしたタブレット端末「Kindle Fire HD」「Kindle Fire」の4モデル。Amazonでは日本国内での販売数などは非公表だが、Amazon.co.jpでの様子やネットでの評判を見る限り、モノクロ電子ペーパー搭載で3G通信が無料利用できる「Kindle Paperwhite 3G」が人気のようで、12月25日現在でも2〜3週間待ちとなっている。KindleはAmazon.co.jpで購入した場合、購入ユーザーのIDが紐付けられた状態で届くため、3G回線が利用できるKindle Paperwhite 3Gでは設定はほぼ不要で使い始められる。ケーズデンキ、ビックカメラなど店頭販売も行なっているが、端末の使い勝手については、2007年に初代Kindleを米国で発売してから5年も手がけているだけあり、ユーザーからは大きな不満は上がっていないようだ。しかし、タイトルは12月10日時点で日本語タイトルが約6万点と、先行するReader Storeやkoboイーブックストアが7万5000点前後、最も扱い点数が多いBookLive!の約10万点であるのに比べると、若干ではあるが数字の上で見劣りする。雑誌などの定期刊行物も含め、今後の充実が期待される。

“電子書籍元年”ブームの立役者、シャープとソニーはアプリで市場拡大を図る

2010年に電子書籍市場に参入し、“電子書籍元年”とマスコミでも大きく取り上げられブームを作ったのがシャープとソニーだ。シャープは2012年には新端末はリリースしていないが、GALAPAGOSのiOSアプリを8月に提供開始、サービス利用が可能な端末数を大きく拡大した。ソニーは今年9月にも電子書籍リーダー端末「Sony Reader」の新製品「PRS-T2」を投入したが、楽天koboやAmazon.co.jpの参入で、2011年発表の3G/Wi-Fi対応端末「PRS-G1」を直販サイトで1万800円に値下げするなど、低価格化する市場への対応を迫られた。Reader Storeは現在までiOSアプリはリリースしていないが、10月にPlayStation Vitaとソニー製品以外のAndroid端末で利用できる電子書籍アプリ「Reader」の提供を開始した。

AppleとGoogleも日本市場に本格参入

コンシューマーのクラウドサービスで世界的シェアを競うAppleとGoogleもそれぞれ電子書籍サービスを持っており、2012年に日本市場に本格参入した形だ。Appleは10月に「iPad」新モデルと「iPad mini」を発表したが、同時にiOS用電子書籍アプリ「iBooks」の新版を発表。日本語の縦書にも対応した。グローバル市場では電子書籍ですでに一定のシェアを持つAppleだが、日本市場でのビジネスは始まったばかり。しかし、iPhoneとiPadを持ち、iTunesという決済手段に慣れた多数のユーザーを抱えるだけに、今後Appleがどのくらいコンテンツ充実に注力するかにもよるが、大きなシェアを握る可能性がある。GoogleはiPad miniの発表より1カ月ほど先行して、9月に自社のAndroid OS搭載タブレット端末「Nexus 7」を日本市場に投入。同時にGoogle Playに書籍ストアを設け、日本でもGoogle Playによる電子書籍販売をスタートした。Nexus 7はTegra 3クアッドコアCPUと1280×800表示のIPS液晶、16GBメモリを搭載して1万9800円という値ごろ感から、発売当初は店頭分は完売、ネット販売でも入荷まで数週間待ちとなるなど人気を集めた。また、11月には10型タブレット「Nexus 10」を3万6800円で発売したが、日本では値ごろ感やサイズから、Nexus 7に人気が集中しているようだ。なお、図書館プロジェクトで、著作権者の承諾を得ずに書籍をスキャンしたことから世界で多くの訴訟を抱えることになったGoogleは、10月に米国出版社協会(AAP)と提携図書館の蔵書をスキャンして検索可能とする「Google Library Project」をめぐる訴訟で和解。しかし、この和解についてAuthors Guildは「Googleは依然として、許諾を得ずにスキャンした数百万の書籍から利益を得ており、我々の集団訴訟は継続される」とするコメントを発表するなど、一連の訴訟問題はまだ決着を見ていない。出版社が(著作者から委任を受けて)出版に関わる著作隣接権を握る米国と違い、日本では作者が著作隣接権も含めて著作権を保持しているため、Googleが一部の著作権者に根強く残る不信感を払拭できるかが、今後Googleの電子書籍ビジネスに影響してくる可能性もある。

品ぞろえでリードするトッパングループ「BookLive!」が専用リーダー端末発売

株式会社BookLive自体は、2011年1月に設立された新しい会社だが、凸版印刷株式会社から2005年に分社化して設立された国内最大級の電子書籍取次会社ビットウェイを親会社に持つ、トッパングループの企業だ。印刷会社としてほとんどの出版社との長い取引関係で培った信頼関係をもとに、12月6日現在で約11万冊というコンテンツ数は、同時期の比較ではKindleの約6万点、楽天のkoboイーブックストアの約7万5000点というネット流通大手も引き離している。対応プラットフォームもWindows OS、iOS、Android OS、Windows Phoneと最も幅広い。そのBookLiveが12月に専用のリーダー端末を発売。書籍に親しみ、パソコンやタブレットなどの情報機器にはあまり馴染んでいない中高年をメインターゲットとしていることから、「メニュー」など日本語の印字された機能ボタンを備える。また、WiMAX通信機能を内蔵し、通信費無料。初期設定不要ですぐ使い始められるのも特徴だ。BookLiveでは自社の専用リーダー端末は初めての試みとなるが、ターゲット層から三省堂書店店頭などでの展開を行なっており、これまでネットユーザーを中心に展開してきた電子書籍市場に、新たな顧客層を呼び込めるかが注目される。

iOS、Android OSアプリへの対応が進む〜ライトユーザーの主戦場はスマホ、タブレットへ

主要な電子書籍リーダー端末およびタブレットのベンダーを中心に2012年を振り返ったが、5インチクラスのディスプレイを採用したスマートフォンの増加やタブレット端末の普及により、専用リーダー端末からスマートフォン、タブレットが電子書籍を利用するライトユーザーにとってメイン環境になるとみられている。電子ペーパーは自発光する液晶に比べ目の疲れが少なく、低消費電力で電池の持ちが良いなど優れた点も持つ一方で、モノクロ表示であること、画面書き換えの遅さ、残像が残るため一定ページごとに白黒反転による画面のリフレッシュが必要なことなど技術的なネックも多い。ソニーなどは当初から多読家がターゲットと明言しているが、スマートフォンやタブレットの普及により、電子書籍や自炊派など専用リーダー端末はよりヘビーユーザー向けに進化していくものと考えられる。電子書籍は、紙の書籍よりも低価格で販売されることが多くなっているが、紙の書籍は家族で1人購入すれば家族全員が読め、購入後の譲渡や古本屋への売却も可能で「所有」であるのに比べ、電子書籍はリーダーアプリなどと合わせて提供され、DRMがかかり譲渡もできないなど、利用者からすると「使用権」を買うという感覚に近い。最近では栗本薫の小説「グイン・サーガ」シリーズやマンガ「こちら葛飾区亀有公園前派出所」など100冊を超えるシリーズの一括販売も行われており、こうしたシリーズの一括購入は万単位の出費となる。まずコンテンツがなければ購入できないため当然ながら品ぞろえが第一ではあるが、何万円ものシリーズをセット買いするかの判断には、サービスの継続性や使い勝手が決め手となってくる。10月にはNTTぷららも電子書籍市場への参入を発表。ドコモ、au、ソフトバンクなど携帯通信事業者はフィーチャーフォンの時代から電子書籍販売を手がけているが、今後はプロバイダーやヤフーをはじめとした大手ポータルサイトなど、多数の課金会員を抱えるサービスプロバイダーおよびコンテンツプロバイダーは、自社でシステム開発するかどうかは別として、ほぼもれなく電子書籍販売を手がけてくると考えられる。プレーヤーが増えることで、現在は1ユーザーアカウントへの紐付けが当たり前だが、たとえば2人で読むためのサービスが提供されるなど、さまざまな用途に応じたサービス、使い勝手の向上登場に期待したい。
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2012年12月22日

全世界で8000万部以上、世界で最も読まれている恋愛小説家って?

「恋愛モノ」「恋愛小説」といえば、今も昔も多くの読者を持つ小説の人気ジャンル。日本でも江國香織さんや村山由佳さんなど、恋愛小説の名手といわれる作家が活躍していますが、世界で最も読まれている恋愛小説家は誰かご存じでしょうか。その人の名はニコラス・スパークス。彼の名は知らなくても、2004年に映画化(日本公開は2005年)された『きみに読む物語』を知っている人は多いはず。著作は全世界で8,000万部以上もの販売部数を記録し、今年は『一枚のめぐり逢い』、昨年は『親愛なるきみへ』と多数の作品が映画化。今月には国内初翻訳の新刊『あの日にかえりたい』も発売されました。そんなニコラス・スパークスの作品の中で、いったいどの作品が最も多く読まれているのかアンケート結果を紹介します。(対象とした作品は、日本語翻訳版が出版されている作品のみ)。結果は以下の通り。

(「AQUTNETリサーチ」調べ)
1位『きみに読む物語』(42.4%)
2位『メッセージ・イン・ア・ボトル』(21.7%)
3位『最後の初恋』(10.3%)
4位『親愛なるきみへ』(8.4%)
5位『ラスト・ソング』(5.4%)
AQUTNETリサーチ調べ(集計期間:12月7日〜12月18日、有効回答数1173)

1位となったのは、やはり『きみに読む物語』。認知症によって過去を思い出せずにいる老女とともに、療養施設へ入寮しているデュークは、ノートに書かれた物語を彼女へ読み聞かせます。ノートに書かれていたのは、1940年の米国南部シーブルックを舞台にした、青年ノアと少女アリーのひと夏の出来事。二人の物語から、やがてデュークと老女の関係も明らかになっていく、純愛小説の名著です。2位は『メッセージ・イン・ア・ボトル』。海辺で休暇を過ごしていた新聞社のコラムニスト・テレサは、手紙の入った瓶を偶然拾い上げたことから思わぬ出会いに導かれていきます。3位の『最後の初恋』は大人の恋愛。ともに結婚生活を失ったエイドリアンとポール。それぞれ不安や傷を持つ二人が、自分の人生を見つめ直し、新たな恋に向かうことになったきっかけとは…?恋愛を扱った小説は数多くありますが、男女の純愛や永遠の愛を、詩的で美しい描写で描くのがニコラス・スパークス作品の大きな特長。

もうすぐクリスマスがやってきますが、家で恋人と一緒にスパークス作品のDVDを見たり、本を読んでスパークスの作品世界に浸ってみると、二人の仲が深まるかも…?人がいない人は女子会や、友達と一緒に楽しむのも良いのではないでしょうか。素敵な恋愛がしたくなること必至です。
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2012年12月19日

ブクログ 2012年ランキングベスト20発表

国内最大のブックレビューコミュニティサイト『ブクログ』が2011年12月1日〜2012年11月30日までにブクログで登録された本の登録数を集計した『ブクログ年間ランキング 2012年』を発表した。ランキングでは、『小説』『コミック』『ビジネス・自己啓発』の3ジャンルで20位までのランキングを公開しているとのこと。小説ランキングでは『ビブリア古書堂の事件手帖3』が1位となり、ブクログ大賞を二年連続受賞した有川浩の作品や東野圭吾の作品や映画化された作品なども多くランクイン。コミックランキングでは、『3月のライオン7巻』が1位となり、2位に『銀の匙』、3位に『テルマエ・ロマエ』。また、ビジネス・自己啓発ランキングは100万部を突破した阿川佐和子の『聞く力』や2位は神田昌典の『2022―これから10年、活躍できる人の条件』、3位は津田大介の『情報の呼吸法』であったとのこと。

▼文芸小説ランキング
1位 ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆~ (三上延 / アスキー・メディアワークス)
2位 三匹のおっさん (文春文庫)(有川浩 / 文藝春秋)
3位 1Q84 BOOK1〈4月‐6月〉前編 (新潮文庫)(村上春樹 / 新潮社)
4位 少女 (双葉文庫)(湊かなえ / 双葉社)
5位 聖女の救済 (文春文庫)(東野圭吾 / 文藝春秋)
6位 ナミヤ雑貨店の奇蹟(東野圭吾 / 角川書店)
7位 プラチナデータ (幻冬舎文庫)(東野圭吾 / 幻冬舎)
8位 1Q84 BOOK1〈4月‐6月〉後編 (新潮文庫)(村上春樹 / 新潮社)
9位 悪の教典 上 (文春文庫)(貴志祐介 / 文藝春秋)
10位 天地明察(上) (角川文庫)(冲方丁 / 角川書店)

▼コミックランキング
1位 3月のライオン 7 (ジェッツコミックス)(羽海野チカ / 白泉社)
2位 銀の匙 Silver Spoon 2 (少年サンデーコミックス)(荒川弘 / 小学館)
3位 テルマエ・ロマエ IV (ビームコミックス)(ヤマザキ・マリ / エンターブレイン)
4位 ONE PIECE 65 (ジャンプコミックス)(尾田栄一郎 / 集英社)
5位 乙嫁語り 4巻 (ビームコミックス)(森薫 / エンターブレイン)
6位 きのう何食べた?(6) (モーニング KC)(よしながふみ / 講談社)
7位 君に届け 15 (マーガレットコミックス)(椎名軽穂 / 集英社)
8位 ちはやふる(15) (BE LOVE KC)(末次由紀 / 講談社)
9位 ジョジョリオン 1 (ジャンプコミックス)(荒木飛呂彦 / 集英社)
10位 進撃の巨人(6) (講談社コミックス)(諫山創 / 講談社)

▼ビジネス・自己啓発ランキング
1位 聞く力―心をひらく35のヒント (文春新書)(阿川佐和子 / 文藝春秋)
2位 2022―これから10年、活躍できる人の条件 (PHPビジネス新書)(神田昌典 / PHP研究所)
3位 情報の呼吸法 (アイデアインク)(津田大介 / 朝日出版社)
4位 ワーク・シフト―孤独と貧困から自由になる働き方の未来図(リンダ・グラットン/プレジデント社)
5位 ビジネスモデル・ジェネレーション ビジネスモデル設計書(アレックス・オスターワルダー/翔泳社)
6位 読書の技法 誰でも本物の知識が身につく熟読術・速読術「超」入門(佐藤優/東洋経済新報社)
7位 ノマドライフ 好きな場所に住んで自由に働くために、やっておくべきこと(本田直之/朝日新聞出版)
8位 「超」入門 失敗の本質日本軍と現代日本に共通する23の組織的ジレンマ(鈴木博毅/ダイヤモンド社)
9位 Think Simple―アップルを生みだす熱狂的哲学(ケン・シーガル/NHK出版)
10位 グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ(デイヴィッド・ミーアマン・スコット/日経BP社
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2012年12月18日

「現代」映したミステリー

単行本が売れない。その嘆きをこれほど多く聞いた年は、近年なかった。前半は話題も乏しく、三浦しをん『舟を編む』(光文社)の本屋大賞受賞や東野圭吾さんの安定した人気が目立ったぐらいだ。一方、単行本を経ず文庫で出たライトな小説のヒットも相次ぐ。この構造変化を、文学賞や批評の場がどう反映するか、問われている。

ようやく後半に、実績ある著者の2作が気を吐いた。2000年代の警察小説ブームの立役者が、7年ぶりに発表した横山秀夫『64(ロクヨン)』(文芸春秋)は、組織人の生きづらさを、1990年代以降のエンターテインメント界の牽引(けんいん)車による大作、宮部みゆき『ソロモンの偽証』(新潮社)は学校のいじめ問題に焦点を当てる。複雑化し抑圧の強まる現代社会を描く上でミステリーが優れた手法であることを示す両作は、年末のランキングでも上位を独占した。

直木賞は熟年デビューの才能が花開いた時代小説の葉室麟(はむろりん)『蜩(ひぐらし)ノ記』(祥伝社)が1月に還暦で、若手のホープとして期待されてきた、32歳の辻村深月(みづき)『鍵のない夢を見る』(文芸春秋)が7月に受賞を決めた。受賞者が話題の芥川賞の陰に隠れがちなのは残念だが、今後のジャンルを担う才能に堅実に光を当てた。

美術学芸員出身の著者がルソーの名画の謎に迫った原田マハ『楽園のカンヴァス』(新潮社)は山本周五郎賞、郷里の炭鉱の町を舞台にした西村健『地の底のヤマ』(講談社)は吉川英治文学新人賞に。ともに自身の原点を見つめ直す強さがあふれていた。

型破りな受賞作を出してきた山田風太郎賞は、創設3年目。人生のままならなさに向き合う窪(くぼ)美澄『晴天の迷いクジラ』(新潮社)と水戸黄門の真の姿を掘り起こした、冲方丁(うぶかたとう)『光圀(みつくに)伝』(角川書店)と実力者の受賞だが、直木賞前の作家を顕彰する他の賞との差異は見えにくくなった。

7月の直木賞で、この賞とは無縁だったSFから、宮内悠介(ゆうすけ)さんのデビュー作『盤上の夜』(東京創元社)が候補入り、日本SF大賞まで得たことには驚いた。3年前夭逝(ようせい)した伊藤計劃(けいかく)さんの遺稿を円城塔さんが引き継いだ『屍者(ししゃ)の帝国』(河出書房新社)も歴史の虚実を混ぜ合わせた発想で話題に。1970年代に小松左京さん、筒井康隆さんの活躍が文学に新風を吹き込んだような、SFの復権が起きるのか。ネット社会で人の結び付き方が変わり宇宙旅行も現実になりつつある2010年代に、「SF的現代」を描く小説が待たれていることは間違いない。年末に、電子書籍のkindleが上陸した。小説の世界の大変動に先駆け、最初に読者をつかむのは、このジャンルだろう。
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2012年12月17日

2012年、書店でもっとも注目された文庫はコレだ

文庫化されて再ヒットした人気作品、文庫書き下ろしのベストセラーなど、2012年もさまざまな文庫が書店店頭を賑わせた。『1Q84』(村上春樹・新潮文庫)、『天地明察』(冲方丁・角川文庫)など大ヒット作品が文庫化。北方謙三の『楊令伝』文庫版(集英社文庫)完結、小野不由美「十二国記」シリーズ(新潮文庫)の完全版の刊行。書き下ろし文庫「ビブリア古書堂の事件手帖」シリーズ(メディアワークス文庫)はミリオンセラーを記録した。また、書店から“発信”されたヒット作も続々誕生した。そこで『ダ・ヴィンチ』1月号では、各書店が工夫を凝らして「売った&売れた」本に注目。それぞれの上位3冊を紹介している。

■紀伊國屋書店新宿本店
1位『ザ・ウーマン』 ジャック・ケッチャム、ラッキー・マッキー/著 金子 浩/訳 扶桑社海外文庫 840円
ヒットを仕掛けた紀伊國屋書店新宿本店の文庫担当の森さんは、「ケッチャム好き」が縁で扶桑社の販促企画段階から関わり、店内で大プロモーションを展開。男性客の割合が多い同店で女性読者の獲得に成功した。
2位『ピース』樋口有介 中公文庫 720円
3位『営業零課接待班』安藤祐介 講談社文庫 630円

■ヴィレッジヴァンガード 下北沢店
1位『ボールのようなことば。』糸井重里 ほぼ日文庫 777円
「TwitterにはPOPと同じ効果がある」と語るのは、ヴィレッジヴァンガード下北沢店次長の長谷川さん。Twitter上でオススメ作品や在庫情報を流し、下北沢の書店独特のヒットを生み出している。一般流通していない『ボールのようなことば。』もTwitterで「ここになら在庫あり!」などの情報が広まった。
2位『さらば雑司ヶ谷』樋口毅宏 新潮文庫 515円
3位『桐島、部活やめるってよ』朝井リョウ 集英社文庫 500円

■book express エキュート品川サウス店
1位『箱の中』木原音瀬 講談社文庫 760円
『箱の中』は、文庫担当の山本さんが著者のサイン色紙で大々的にアピール。普段はBLものを手に取らないような“普通の男性サラリーマン”が購入しているという。
2位『できる人の口ぐせ』菊入みゆき 中経の文庫 580円
3位『ラストダンス』堂場瞬一 実業之日本社文庫 720円
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小説とノンフィクション売れ行き低迷 出版不況深刻化、今年はミリオンセラーなし

情報サービス会社「オリコン」のランキングによると、書籍売り上げの調査を開始した2008年以来初めて、2012年単年での総合部門のミリオンセラーがゼロになった。2012年12月2日発表された「年間"本"ランキング」の総合部門1位は「骨盤枕」付きの「寝るだけ! 骨盤枕ダイエット」で売り上げ部数は約79万2000部。ダイエット本や付録つき書籍として初の年間トップとなった。11年は「謎解きはディナーのあとで」(東川篤哉)「心を整える。」(長谷部誠)を含む7作が100万部超えを記録しただけに、出版関係者は「書籍を取り巻く状況は厳しさを増すばかり」と話している。

1500円前後の単行本が大苦戦

「単年でのミリオンセラーが1冊もない」という12年の状況について、社団法人・出版科学研究所の書籍担当者は「小説とノンフィクションの売れ行きが低迷し、中でも1500円くらいの価格設定の単行本が厳しくなっている。不況の影響もあって、読者の考えが『小説は文庫で、ノンフィクションは新書で読む』というように変わってきています」と話す。

続けて「読者の中には、書店で単行本を買わずに新古書店で購入したり、図書館で借りたりという傾向も進んでいるはず。数年前なら100万部に達していたであろう話題の小説も、今年は40万部くらいで頭打ちになり、コアなファンから一般の読者へと遠心力が働きにくくなっています」と指摘した。

東京都内の出版社の書籍編集者もほぼ同様の意見だ。「不況時は実用書が強い−というのを今年のランキングは裏付けてますが、それにしてもベスト10入りの小説がわずか1冊とは…。出版社は今どこも1400〜1500円の単行本で苦戦を続けており、力を入れる対象を新書や文庫にシフトさせる社もあるようです」。出版科学研究所によると、12年中の書籍の出版点数は前年並みの約8万点。だが、21世紀に入ってからの書籍の売り上げは05年から11年まで7年連続で減り続けており、12年も前年割れは確実な情勢という。

ダイエット関連がベスト10の半数占める

2012年のオリコンランキングは全国1907店から集めた実売部数(集計2011年11月21日〜12年11月18日)に基づいて作成しており、総合部門の年間ベストセラーは次の通り。

1位 寝るだけ! 骨盤枕ダイエット  福辻鋭記(学研パブリッシング)
2位 聞く力−心をひらく35のヒント  阿川佐和子(文春新書)
3位 置かれた場所で咲きなさい  渡辺和子(幻冬社)
4位 カーヴィーダンスで楽やせ!  樫木裕実(学研パブリッシング)
5位 体脂肪計タニタの社員食堂  タニタ(大和書房)
6位 樫木式カーヴィーダンスで即やせる!  樫木裕実(学研パブリッシング)
7位 舟を編む  三浦しをん(光文社)
8位 人生がときめく片づけの魔法  近藤麻理恵(サンマーク出版)
9位 大往生したけりゃ医療とかかわるな  中村仁一(幻冬社新書)
10位 樫木式カーヴィーダンスで部分やせ!  樫木裕実(学研パブリッシング)

1位の「骨盤枕ダイエット」は付録の骨盤枕だけで始められる手軽さと、テレビ番組で取り上げられたことなどから、昨年からの累計を164万部に伸ばしている。監修者の福辻鋭記さんは美容鍼灸の第一人者という。2位の阿川佐和子さんの「聞く力」は約65万8000部を売り上げ、今年発売の書籍としてはトップ。週刊文春で約20年、連載対談を行っている阿川さんが「相づちの極意」「質問は3本など」といったインタビューの際の秘訣を披露している。また3位の「置かれた場所で咲きなさい」の売り上げ部数は約63万6000部。著者の渡辺和子さんは、85歳の現役教育者でノートルダム清心学園理事長を務める。

小説のランキング入りは約45万8000部を売り上げた7位の「舟を編む」のみで、ベスト10のうち、ダイエットとエクササイズ関連本が5作を占めた。総合部門以外では、文庫部門の1位は三上延さんの「ビブリア古書堂の事件手帖〜栞子さんと奇妙な客人たち〜」(アスキー・メディアワークス)で約84万7000部。またコミック部門トップは尾田栄一郎さんの「ONE PIECE 65」(集英社)で約333万7000部だった。
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2012年12月16日

キンコン西野だけじゃない! 太宰嫌いな人々

「僕は太宰治が(いかがわしいから)大嫌いなのですが」…このつぶやきが発端となりTwitterが炎上した、お笑いコンビ・キングコングの西野亮廣。その後、「太宰治先生のファンの皆様、たいへん申し訳ございませんでした」と謝罪したが、その際、「負けた私が言うのもおかしな話ですが、『大人とは裏切られた青年の姿』なのです。覚えておいてください」と、太宰の作品『津軽』の一節を引用。太宰への印象だけで語っているわけではなく、作品を読んだ上での発言であることを漂わせた。

太宰治といえば、残された写真をケータイの待ち受けにもしているというピースの又吉直樹をはじめとして、今も熱狂的なファンを生み出している文豪。しかし、キンコン西野のように「嫌い!」と拒否反応を示す人も少なくない作家でもあるのだ。

例えば、今、政治の世界で大きな注目を集めている石原慎太郎もそのひとり。2009年、産経新聞に寄稿した「石原慎太郎 文学と世相」でも、「太宰の小説を生理的にどうにも好まない」「太宰治の自意識の構造とは、自己否定による、実は自己愛。自己嫌悪による、実は己への愛着だが、私にはそれがなんともいじましく好きにはなれない」と宣言。「太宰の虚弱な性格は、その跳ね返りとして他人からの説得を受け入れられない。具合の悪いことはへらへら笑って聞き流す」と性格にまで言及。また、「(太宰の小説を)極めて好むという現代の風潮には大層危ういものがある」と昨今の“太宰好き”の増加をも憂い、「この国も実は今のままでいけば衰弱のはてに自殺しようとしているように思えてならない」と国家論にまで発展させる。

また、村上春樹も『おおきなかぶ、むずかしいアボカド 村上ラヂオ2』(村上春樹:著、大橋 歩:画/マガジンハウス)に収められた「太宰治は好きですか?」というエッセイにおいて“肌に合わない”と明かし、さらに太宰本人に向かって「嫌い」と言い放ったといわれる三島由紀夫は、『小説家の休暇』(新潮社)において「第一私はこの人の顔がきらひだ。第二にこの人の田舎者のハイカラ趣味がきらひだ。第三にこの人が、自分に適しない役を演じたのがきらひだ」と記述。

Web上でも、太宰を巡っては好き嫌いの論争が激しいもの。なかには「なんとなく嫌い」という人も多いようだが、そんな人には、太宰作品の“ぐっとくる”ポイントを押さえた『泣ける太宰 笑える太宰』(宝泉 薫/彩流社)や、人気作家・森見登美彦によるアンソロジー『奇想と微笑―太宰治傑作選』(光文社)を読んでみてからジャッジしてはいかがだろう。しかし、これほどまで好き嫌いが分かれるというのは、それだけ太宰がインパクトの強い作品を生み出したという証拠だろう。さて、あなたはどっちに加勢する?
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山崎豊子の偉大さを感じる小説を一挙に紹介

一時期、実話をもとにした映画がハリウッドでよく作られていましたね。ユダヤ系ポーランド人の体験記を元にした「戦場のピアニスト」や人種混成フットボールチームの「タイタンズを忘れない」、それに連続殺人鬼を題材にした「モンスター」やマンデラ大統領とラグビー選手の友情を描いた「インビクタス 負けざる者たち」。もちろん、沈没した豪華客船「タイタニック」も忘れちゃいけない。「事実は小説より奇なり」と言いますが、実際にあったことというのは説得力がありますよね。山崎豊子さんの小説も事実を元にしたものが多いので、勉強になるし、強い説得力を持っています。事実を元にした作品が好きな方は、山崎豊子作品を読んでみてはいかがでしょうか?

偉大な作品たち

大学病院の現状を鋭く描いた「白い巨塔」は、ドラマ化で有名になりましたね。作品の中で書かれた医療ミスや裁判は創作ですが、病院は大阪大学の医学部がモデルになっているそうです。また「華麗なる一族」は、神戸銀行をモデルにしたのだとか。

「二つの祖国」では日系人の戦中戦後の戦いが描かれており、「大地の子」では中国残留孤児の問題が扱われています。また最も新しい「運命の人」は1971年の沖縄でおきた外務省機密漏洩事件(通称「西山事件」)をモデルにしています。私は「二つの祖国」を読んで、第二次世界大戦中にアメリカ在住の日系人は強制収容所に収容されていたことを知り、「大地の子」を読んで、教科書や授業では学ぶことが出来なかった中国残留孤児や中国の文化大革命について知ることが出来ました。関係ないのですがー。山崎豊子作品を読んでると「浅黒い肌」「太く濃い眉毛」というキーワードがよく出てきます。たぶん、この二つは山崎豊子さんの好きな男性のタイプなのだと思います。本当によく出てくるんですよ、この二つの表現。

読書の醍醐味

読書の醍醐味は、その世界を楽しむ、世界観に浸れるということもあると思うのですが、自分の知らなかった知識を得るということもあるのではないでしょうか?だけど、戦争体験や経済、社会問題について書かれた本は重いし難しい。そんな時にちょうどいいのが「実話をもとに書かれた」という作品です。上記のように山崎豊子さんの作品は実際にあった事件をモチーフにしていたり、実在の人物をモデルにしていたりするので、その時代の流れや知識を頭に詰め込みやすいという利点があります。賢い大人の女性になるためにも、山崎豊子さんが書いた社会派小説を読んでみてはいかがでしょうか?
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2012年12月15日

Yonda? ...いや、読めません。新潮社がKindleストアからコンテンツを引き上げ

黒船Kindleに暗雲です。CNET Japanによると、Kindleストアから新潮社のコンテンツが削除されているとのことです。しかも…

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新潮社は「把握していなかった事柄があったため、12月13日の夜にコンテンツを引き上げた」としている。具体的には、支払い関連のトラブルがあったことを示唆した。
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と報じており、10月25日のストアオープンから2カ月弱でのこの事態に、驚きが隠せません。ただ、PC版Kindleストアで「新潮」で検索すると、「三浦綾子 電子全集」などいくつかはまだ表示されています。

なお、Ceron.jpに寄せられたコメントによれば、すでに購入済みのコンテンツは引き続き読めるようです。Kindleで購入した本を所有することはできないという記事にもあるとおり、Amazonは「利用者が購入しているのは読む権利だけ」としているので不安視する声もありましたが、ひとまずは大丈夫そう。ただ、続きものを途中までKindleストアで購入していた人は頭を抱えることになってしまいました。このトラブルが他の出版社にも起こりうるのか、これからが気になります。
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2012年12月14日

2012年、今年もっとも愛された文庫、ベスト20が決定

『ダ・ヴィンチ』1月号にて、今年もっとも愛された文庫TOP20が発表された。ノーベル文学賞は受賞を逃したものの、村上春樹の新たなる代表作『1Q84』が読者の支持を受け1位。「BOOK 1〜3」、それぞれ2冊で計6冊の大ボリュームながら、読み始めれば止まらなくなる物語の魅力、文体の中毒性は圧倒的。白地の表紙が書店の風景をガラっと塗り替えたのも記憶に新しい。同誌10月号で巻頭大特集が組まれた際、続編「BOOK4」の可能性について本人は、ゼロではないというニュアンスの回答を寄せていたが…。

2位は、2010年本屋大賞を受賞した『天地明察』(冲方丁)。今夏、岡田准一主演&滝田洋二郎監督による実写映画化で注目度アップ。映画公開の4カ月前に文庫化され、累計150万部を超えるヒット作となった。改暦を命じられた主人公が挫折を重ねながらも大願成就に挑む不屈の精神は、「復興期」の今を生きる日本人にとって学ぶべき点は多い。

3位には〈完全版〉の刊行が始まった小野不由美の「十二国記」シリーズがランクイン。旧版読者も買い替えたくなるほど、山田章博が新たに描き下ろした装画イラストは美麗の極み。

ランキングを見渡すと何より驚くのは、映像化作品の多さだ。全20位21作中15作が、映画・ドラマ・アニメ化されている(予定も含む)。未だ映像化が発表されていない作品(11月25日現在)は、『1Q84』のほかに、東野圭吾の『聖女の救済』、有川浩の『三匹のおっさん』など、いずれも人気作家の作品だけに、今後のメディア展開に期待は高まる。ここでは10位までを紹介する。同誌では全20位21作品が掲載されている。

1位『1Q84』(BOOK 1・2・3 全6巻)村上春樹 新潮文庫
2位『天地明察』(上・下)冲方 丁 角川文庫
3位『月の影 影の海 十二国記』(上・下)小野不由美 新潮文庫
4位『聖女の救済』東野圭吾 文春文庫 
5位『ビブリア古書堂の事件手帖 3 〜栞子さんと消えない絆〜』三上 延 メディアワークス文庫 
6位『悪の教典』(上・下)貴志祐介 文春文庫
7位『フリーター、家を買う。』有川 浩 幻冬舎文庫
8位『三匹のおっさん』有川 浩 文春文庫
9位『プラチナデータ』東野圭吾 幻冬舎文庫
10位『桐島、部活やめるってよ』朝井リョウ 集英社文庫
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2012年12月12日

2012年、今年最も読み応えがあった小説 TOP50発表

本とコミックの情報誌『ダ・ヴィンチ』の「BOOK OF THE YEAR 2012」が今年も発表された。“今年最も読み応えがあった本”をダ・ヴィンチ読者、書店員、文筆家など、本好き4625名の声が詰まった年末恒例のブックランキングだ。今年はさらに有川浩人気が高まった。昨年は総合ランキング第1位。今年は小説部門の1、2位が有川作品だった。

第1位の 『空飛ぶ広報室』は、著者お得意の自衛隊小説だ。ただし、今回登場する自衛隊員は広報という事務方に就く人々。自衛隊らしからぬオフィスワークに勤しむ彼らに親しみを感じた読者も多いのではないだろうか。第2位の『三匹のおっさんふたたび』は、アラカン男の活躍をハートフルに書く作品の続編。読者コメントでもおっさんたちの帰還を喜ぶ声が多かった。第3位『ナミヤ雑貨店の奇蹟』は、東野圭吾としては久しぶりのファンタジー色あふれるミステリーで、「ガリレオ」シリーズから入ったファンには新鮮に受け止められたようだ。同誌では50位までの作品を全紹介するほか、有川浩の独占インタビューも掲載している。

1位『空飛ぶ広報室』(有川 浩/幻冬舎)
2位『三匹のおっさん ふたたび』(有川 浩/文藝春秋)
3位『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(東野圭吾/角川書店)
4位『ビブリア古書堂の事件手帖3 栞子さんと消えない絆』(三上 延/メディアワークス文庫)
5位『楽園のカンヴァス』(原田マハ/新潮社)
6位『虚像の道化師 ガリレオ7』(東野圭吾/文藝春秋)
7位『ソロモンの偽証』(全3巻)(宮部みゆき/新潮社)
8位『残穢(ざんえ)』(小野不由美/新潮社)
9位『神様のカルテ 3』(夏川草介/小学館) 
10位『謎解きはディナーのあとで 2』(東川篤哉/小学館)
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「その場小説」5年で計54作、作品集も出版

文学イベントなどの会場で、新作小説を即興で書き下ろしつつ朗読する「その場小説」の取り組みを、作家のいしいしんじさん(46)が続けている。2007年から5年で計54作を完成させ、幻冬舎から同名の作品集も出版された。

神奈川・三崎海岸の古い寺の一画。先月25日、お堂に集まった70人の観客は、いしいさんを緊張気味に見守っていた。本の刊行を記念して、「その場小説」の実演が行われたのだ。

あいさつが終わると、作家は「お客が自分の目に入らないように」90度体を傾ける形でいすに座り、机に白い紙を置き、鉛筆を握る。

<今年 八十四歳になる まるいち魚店の……>。文字を書きながら、一語一語思いついた言葉を読む。とぎすまされた集中力に、緊張感が漂う。30〜40分で一作が仕上がった。

自作の朗読を頼まれた際、自分にとって「終わってしまった」過去の小説を読むのを物足りないと感じたのがきっかけだ。「会場の気配、訪れた土地の気分に全身で浸り、浮かんだ物語を語る方がスリリングではないか」。当初は時間をかけすぎる失敗もあったが、最近はペースをつかめてきた。

思いがけない物事が作品に流れ込むことがある。昨年の東日本大震災後の大分での行事では、「九州でも東北と同じく地面が揺れたのだ」と感じ、地震がモチーフの短編が出来た。一方、この日の行事があった三崎は、2001年から3年間、いしいさんが暮らした土地だ。魚屋の余り物を食べ、太った猫が玉になる場面が描かれ、町に感謝するような伸びやかな一編となった。

無意識と意識の間で、世の中の空気を作家がどのように感じ、文章にしてゆくかをリアルに感じられる試みだ。
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加藤シゲアキ、第2弾小説執筆!サブカルではなく“小説家枠”希望

4人グループ、NEWSの加藤シゲアキ(25)が来年3月1日に第2弾小説「閃光スクランブル」(角川書店刊)を出版することが3日、分かった。

この日、都内でスポーツ紙の取材に応じた加藤は全国書店に対し、サブカルコーナーではなく“小説家枠”での陳列を訴えた。

約2カ月かけて完成させた新作は、東京・渋谷のスクランブル交差点を舞台に、AKB48を連想させる女性アイドルと男性パパラッチを描いた芸能界インサイドストーリー第2弾。2人の逃避行やアクションシーンも盛り込み映像化も期待できる力作に加藤は「120点」と手応えを見せた。

唯一の不安は書店の評価だ。加藤によると、今年1月に出版した芸能界を題材にしたデビュー作「ピンクとグレー」は、ジャニーズ事務所などの暴露本が置かれたサブカルコーナーに陳列されているケースがあったという。それだけに、加藤は「一作家として読んでいただくとうれしい」とアピールも忘れなかった。

加藤は現在、小説第3弾も構想中。処女作から続く渋谷を舞台にした作品の完結編を検討しているという。
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2012年12月11日

「聞く力」が100万部 20年ぶりのミリオンゼロ回避

阿川佐和子著「聞く力 心をひらく35のヒント」(文芸春秋)が10日、今年発行の本で初めて100万部に達した。今年は12月に入った時点でミリオンセラーがなく、「20年ぶりのゼロ」(出版科学研究所)になる可能性があった。

「聞く力」は1月発売。同社が10日、15万部の増刷を決めて到達した。文春新書の向坊健編集長は「用事はメールで済ませてしまう時代、改めて人の話を聞くことの大切さが響いたのではないか」と話した。
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2012年12月08日

今年の本のランキングは? ダ・ヴィンチ「Book of the Year 2012」発表!

12月6日(木)に発売のダ・ヴィンチ1月号では、毎年恒例となる「Book of the Year 2012」特集にて「今年最も読み応えがあった本」のランキングを発表。小説ランキング部門では有川浩の『空飛ぶ広報室』(幻冬舎)が1位を受賞した。有川浩は昨年も『県庁おもてなし課』(角川書店)で1位を受賞しているが、今年は2位にも著書『三匹のおっさん ふたたび』(文藝春秋)がランクインしており、さらに有川浩人気が高まっている。

「Book of the Year」は、ダ・ヴィンチ編集部が行う“今年最も読み応えがあった本”を決めるランキング。2001年1月号よりスタートし、今年で13回目を迎えた。このランキングは単なる売上ランキングとは異なり、書評家、アンケート会員、全国の書店員など、“本の目利き”と言われる4625人が実際に読んだ本の中から厳選し、投票した結果をランキングに反映させている。大賞受賞作品は書籍の帯や店頭で『「ダ・ヴィンチ」Book of the Year受賞作品』と紹介されている。

今年は総合ランキングを廃止、「小説」「男性誌コミック」「女性誌コミック」「文庫」「趣味」など7つのジャンル別ランキングと、好きな作家・マンガ家や出版社のランキングを掲載している。

また、小説・コミックのランキングで1位を受賞した有川浩、荒川弘、末次由紀のインタビューのほか、スギちゃんや美木良介など各界でブレイクした5人が選んだオススメの1冊、若林正恭(オードリー)、又吉直樹(ピース)、星野源ら連載陣が語り合う企画も掲載されており、盛りだくさんの内容となっている。

■小説ランキング部門(※誌面には50位まで掲載)
【1位】『空飛ぶ広報室』(有川 浩/幻冬舎)
【2位】『三匹のおっさん ふたたび』(有川 浩/文藝春秋)
【3位】『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(東野圭吾/角川書店)
【4位】『ビブリア古書堂の事件手帖3 栞子さんと消えない絆』(三上 延/メディアワークス文庫)
【5位】『楽園のカンヴァス』(原田マハ/新潮社)

■男性誌コミックランキング部門(※誌面には20位まで掲載)
【1位】『銀の匙 Silver Spoon(1〜5巻)』(荒川 弘/小学館少年サンデーC)
【2位】『ONE PIECE(1〜68巻)』(尾田栄一郎/集英社ジャンプC)
【3位】『宇宙兄弟(1〜19巻)』(小山宙哉/講談社モーニングKC)
【4位】『3月のライオン(1〜7巻)』(羽海野チカ/白泉社ジェッツC)
【5位】『名探偵コナン(1〜77巻)』(青山剛昌/小学館少年サンデーC)

■女性誌コミックランキング部門(※誌面には20位まで掲載)
【1位】『ちはやふる(1〜18巻)』(末次由紀/講談社BE LOVE KC)
【2位】『君に届け(1〜17巻)』(椎名軽穂/集英社マーガレットC)
【3位】『夏目友人帳(1〜14巻)』(緑川ゆき/白泉社花とゆめC)
【4位】『大奥(1〜9巻)』(よしながふみ/白泉社ジェッツC)
【5位】『俺物語!!(1〜2巻)』(アルコ:マンガ、河原和音:原作/集英社マーガレットC)
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2012年12月03日

2012年ベストセラー、1位は「聞く力」−上半期18位からランクアップ /東京

大手出版取り次ぎのトーハン(新宿区東五軒町)は12月3日、2012年年間ベストセラーを発表した。総合部門の1位に輝いたのは、阿川佐和子さんの「聞く力」。今年1月の発売以来売れ続け、上半期18位からのランクアップとなった。上半期1位の「体脂肪計タニタの社員食堂、続・体脂肪計タニタの社員食堂」が4位、今年の本屋大賞を受賞し来年4月に映画が公開される「舟を編む」が上半期と同じく5位に、それぞれランクインした。総合ベスト20は以下の通り。

1位=「聞く力」(阿川佐和子)
2位=「置かれた場所で咲きなさい」(渡辺和子)
3位=「新・人間革命(24)」(池田大作)
4位=「体脂肪計タニタの社員食堂、続・体脂肪計タニタの社員食堂」(タニタ)
5位=「舟を編む」(三浦しをん)
6位=「大往生したけりゃ医療とかかわるな」(中村仁一)
7位=「人生がときめく片づけの魔法、人生がときめく片づけの魔法(2)」(近藤麻理恵)
8位=「不滅の法」(大川隆法)
9位=「実はスゴイ!大人のラジオ体操」(中村格子、秋山エリカ監修)
10位=「50歳を超えても30代に見える生き方」(南雲吉則)
11位=「『空腹』が人を健康にする」(南雲吉則)
12位=「日本人の知らない日本語(3)」(蛇蔵、海野凪子)
13位=「美木良介のロングブレスダイエット、美木良介のロングブレスダイエット 1週間即効ブレスプログラム、美木良介のロングブレスダイエット 必やせ最強ブレスプログラム」(美木良介)
14位=「采配」(落合博満)
15位=「かいけつゾロリ はなよめとゾロリじょう、かいけつゾロリのメカメカ大さくせん」(原ゆたか)
16位=「こびと大百科」(なばたとしたか)
17位=「謎解きはディナーのあとで、謎解きはディナーのあとで(2)」(東川篤哉)
18位=「心を上手に透視する方法」(トルステン・ハーフェナー/福原美穂子訳)
19位=「黒子のバスケ-Replace-、黒子のバスケ-Replace 2-、黒子のバスケ-Replace 3-」(平林佐和子/藤巻忠俊)
20位=「こびと観察入門(1)」(なばたとしたか)
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2012年12月02日

東野圭吾、佐伯泰英の2トップは不動 「売れる作家」ランキング

水嶋ヒロ(齋藤智裕)の処女小説『KAGEROU』と、おばあちゃん詩人・柴田トヨによる『くじけないで』が「100万部突破!」と、ミリオンセラーの話題で幕を開けた2011年。今、最も売る力のある作家は誰か。直近約1年半の期間に売り上げた本の冊数が多い作家順に、ランキングした。日経エンタテインメント!誌は2009年9月号でも『小説・マンガ250』として、同様のランキングを発表した。比べてみると、トップ10のうち6人の顔ぶれは変わらず。2010年に作家生活10周年を迎えた7位伊坂幸太郎、3年ぶりの現代小説『小暮写眞館』を2010年に発表した8位宮部みゆきなど、名前ですぐに“作家買い”される実力者が上位の座を守っている。

■ミステリーと歴史・時代小説に高い支持

圧倒的に強いのは、1位東野圭吾と2位佐伯泰英。09年から不動のビッグ2からうかがえるのは、ミステリー人気の高さと歴史・時代小説への根強い支持。ミステリー関係の作家は、10位以内の4名と、『謎解きはディナーのあとで』が本年度本屋大賞を受賞して圏外から26位にランクインした東川篤哉ほか、計28人とTOP100の3割近く。歴史・時代小説家は司馬遼太郎(3位)ら往年の時代小説家、書き下ろし時代小説の新鋭・高田郁(80位)など20人超。ミステリーと歴史・時代小説の書き手を合わせるとTOP100の半数にものぼる。

なお、2009年は調査外だったビジネス書や絵本などのジャンルで目立ったのが、6位池上彰。池上は2007年発売の『伝える力』がロングセラーとなったほか、10年から始まった冠番組の関連書籍『池上彰の学べるニュース』など、多数の著作で時事問題をかみ砕き、ベストセラーを連発している。テレビ出演を減らしている現在もなお、その知名度と安定感は健在だ。5位鎌池和馬を筆頭に、14位成田良悟、16位西尾維新ほか、ライトノベル作家勢も存在感を増した。深夜アニメの人気が広がり、アニメ原作としてファン層を拡大したことが大きく影響しているのだろう。

■上昇のカギは文庫化戦略

出版業界全体の傾向として、単行本の売れ行きが鈍り、文庫の売れ行きが圧倒的に伸びている。「文庫が出るのを待つ人や、文庫から読みたいものを探す人が増えた」と言うのは、書店の文庫担当者。「小説を単行本で買っているのは、一部のファンかセミプロレベル。作家さんの中にも『新作を楽しみに待ってくれている本当のファンは文庫読者』と考える方も」と明かす編集者もいる。

ランキング1位に東野、2位に佐伯と並んでいるとおり、文庫作品が多く売れている作家が、上位に食い込んでいる。10位に急上昇した有川浩は、出世作「図書館戦争」シリーズをはじめ、主だった作品の文庫化が進んだことで順位を大幅に上げた。 ほかに特に目立ったのは、映画原作になった作家の圧倒的な強さ。79位から9位に急上昇した『告白』の湊かなえや、圏外から20位に浮上した『悪人』の吉田修一、ドラマ化と映画化が相次いだ『八日目の蝉』の角田光代(27位)など、映像化をきっかけに文庫が爆発的な売れ行きを見せた作家が続々と順位を上げている。文庫化に独自のルールを持っていた出版業界も、「文庫化のタイミングは映像化やアニメ化の公開時期」へと常識が変化しつつある。

また、ランキング作成の手法上、多くの著作を持つ作家がランクインしやすい一方で、1冊のビッグタイトルだけでランクインした作家もいる。18位岩崎夏海は『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』を含めて出版数が3点、水嶋ヒロや柴田トヨに至っては1点だけでのトップ100入りだ。ネットの普及による口コミの力や、メディア展開の工夫で著者の経験や知名度にかかわらず、ヒットが出せる傾向は強まっている。

■消えたケータイ小説

勢いが薄れたジャンルもある。前回も斜陽傾向が見られたケータイ小説家は、全員キレイに姿を消した。『獣の奏者』の上橋菜穂子(58位)が健闘を見せるSF・ファンタジー作家も元気がない。海外小説家も、唯一『ダ・ヴィンチ・コード』の88位ダン・ブラウンが継続してランクインしたのみで、総勢で4人とふるわなかった。
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2012年11月27日

市原隼人主演でドストエフスキー最高傑作『カラマーゾフの兄弟』ドラマ化

俳優の市原隼人(25)が、来年1月スタートのフジテレビ系連続ドラマ『カラマーゾフの兄弟』(毎週土曜 後11:15)に主演することが26日、わかった。19世紀のロシア文学を代表する作家・ドストエフスキーの最高傑作の一つに数えられる同名長編小説を、現代の日本に置き換えてドラマ化。主人公の三兄弟のうち、理知的で感傷を嫌うクールなニヒリストである次男・黒澤勲を演じる市原は「感情を表に出さない役は(銀幕デビュー作の)『リリイ・シュシュのすべて』(岩井俊二監督)でも演じたけれど、感情があるのかないのかさえわからない今回のような役は初めて。撮影に入るのがものすごく楽しみです」と新境地に期待をふくらませる。

2006年に出版されたドストエフスキー研究の第一人者・亀山郁夫氏による新訳本(光文社古典新訳文庫/全5巻)が爆発的に売れ、東京大学教授が新入生に読ませたい小説1位に選ばれるなど再注目を集めている『カラマーゾフの兄弟』。性格のまったく異なる3人兄弟が、父親の殺人事件とその裁判をめぐって織りなす衝撃的な物語に、信仰、国家、父子関係といった多彩なテーマが重層的に散りばめられている。思想小説や推理小説、家庭小説、恋愛小説などとしても読むことができる、まさに純文学の傑作だ。

今回、地上波では初めてドストエフスキー作品を原案としたドラマが制作されること受けて、市原は「今回のドラマの話が来るまで、ちゃんと読んだことがなかったのですが、こんなにもいろいろな角度から楽しめる作品に出られるなんて、2度とないんじゃないか。参加できることがうれしいし、感謝しています」と壮大な企画に心躍らせる。

脚本は『ストロベリーナイト』(同局系)の旺季志ずか氏が辣腕(らつわん)をふるう。地方都市で起きた殺人事件で容疑をかけられた3人の異母兄弟の物語を三部構成でみせていく。第一部では、事件の日に至るまでの兄弟一人ひとりの足跡をたどり、三者三様の父への“殺意”を浮かび上がらせる。第二部では、事件当日を。第三部では、取り調べから判決まで、それぞれの想いや葛藤、事情を描きながら、事件の真相に迫っていく。共同テレビ・森安彩プロデューサーは、「原作は複雑で重厚な物語ですが、暗いドラマではありません。土ドラ枠らしいチャレンジの一つにしたい」と強調した。

共演は失業中でヒモのような生活をしているいい加減な長男・満役に斎藤工(31)、精神科医を目指す医大生の三男・涼役に林遣都(21)、地域一帯に多くの土地を持ち、不動産業と建設業を営む父・文蔵役に吉田鋼太郎が出演。その他にも、勲が密かに思いを寄せる満の恋人、文蔵の秘書兼執事、黒澤家の使用人などさまざまな人物が登場する。

市原は「時には次男だったり、時には父親だったり、時には使用人だったり、すべての登場人物にどこかしら感情移入できる部分がある。きっと年齢を問わず楽しんでいただける作品になると思いますし、撮影をしていく中で、自分も日々変わってくると思いますし、そんな自分も楽しみたい」と話していた。
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2012年11月09日

<安部公房>未発表の短編小説見つかる デビュー前に執筆

「砂の女」「他人の顔」などで知られる作家、安部公房(1924〜93年)がデビュー前に書いた、未発表の短編小説が見つかった。終戦の翌1946年秋、満州(現中国東北部)からの引き揚げ船内で書かれたとみられ、人間の根源的な狂気や不安を、高い言語感覚で描いている。後年ノーベル文学賞候補ともされた作家を知る上で、貴重な発見と言えそうだ。

札幌市内の安部の実弟宅で見つかった。タイトルは「天使」。精神を病んだ主人公が天使となって病室を抜け出し、妄想の中で天使の国をさまようという内容だ。

原稿はA5判ノートに黒インクで縦書きされ、全37ページ。訂正の跡が少なく、清書とみられる。安部が当時、東京大医学部の後輩に宛てた書簡には執筆中の小説「天使の国」に触れた箇所があるが、実物はこれまで確認されず、「幻」の作品だった。

執筆当時、安部は22歳。文芸評論家の加藤弘一さんは本作について「ここには生命への肯定がある。シニカルで論理的な面を強調されてきた作家の、ヒューマンな一面が読み取れる」と指摘。「壁に囲まれた病室が、不自由であると同時に無限の宇宙だという逆説は、後に芥川賞を受賞した『壁−−S・カルマ氏の犯罪』にも通じる」と話している。

「天使」は7日発売の「新潮」12月号に掲載される。
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2012年11月04日

本はやっぱり読むべき!? 読書は心身の健康にいいことが判明 「大脳が活性化」「アルツハイマー病の予防」「孤独を感じにくくなる」など

みなさんは1カ月に本を何冊読むだろう。小中学生などは国語の宿題もあり読書の機会も多いが、大人になるにつれてなんとなく読まなくなったという人が多いのではないだろうか。しばらく本を開いていない人は健康のためにも読書を始めてもいいかもしれない。専門家の研究によると、読書は単なる娯楽にとどまらず、私たちが考えている以上に心身の健康にいい影響があることが判明したそうだ。

■大脳が活性化する

オックスフォード大学の神経学の名誉教授であるJohn Stein氏は「読書は大脳のトレーニングだ」と主張する。本の世界に没頭しているとき、それは単純にストーリーを追っているとういわけではないそうだ。本を読み想像することで大脳は想像したことを実際に経験したときのように活性化するという。

想像力だけで、脳が活性化するとは大げさな話にも聞こえる。しかし、読書中の脳の様子をMRIでスキャンしたところ、本の中の景色や音、においや味を想像しただけで、大脳のそれぞれをつかさどる領域が活性化し、新しい神経回路が生まれたというのだ。つまりこれは読書を通して、大脳が実際に本の中のことを経験したかのような働きを見せたといことである。テレビやゲームでは同様の現象は起きない。
 
■孤独を感じにくくなりストレスも軽減

英語の格言に「You’re never alone with a book(良書があれば決して孤独にはならない)」とということばがある。その格言どおり、読書は孤独を感じさせにくくするそうだ。そればかりか、心をリラックスさせ、しばしの間悩みを忘れさせ、ストレス軽減にもなるという。

イギリスのサセックス大学の研究によると、わずか6分間の読書によりストレスが3分の2以上軽減されることがわかっているそうだ。これは音楽鑑賞や散歩によるストレス軽減をはるかにしのぐレベルである。読書に必要な集中力が脳をリラックスさせ、筋肉の緊張をほぐし、心拍数を下げるためだと考えられている。
 
■アルツハイマー病の予防に

学術誌『the Archives of Neurology』にカリフォルニア大学バークレー校の研究チームが発表したところによると、子どもの頃から読書習慣がある、すなわち継続的に脳を刺激していると、アルツハイマー病の原因とされている物質「ベータアミロイド」の形成を抑制するこができるそうだ。

専門家が認知症の症状が出ていない60才以上の脳を調べたところ、幼い頃から読書、将棋をたしなむなど大脳を刺激するような生活を送っていた人は脳内のベータアミロイドが非常に少なかったそうだ。だが、これらの活動をしていない人は脳内に多量のベータアミロイドが存在したそうだ。
 
このほかにも、「物語を通じて他者の感情を体験することにより、相手の感情を推し量ることができるようになりコミュニケーション力がアップする」、また子どもについては「読書習慣のある子どもは集中力が増す」、「物語の展開を想像することにより論理的な思考力がはぐぐまれる」という研究結果もあるそうだ。

教師が口うるさく「本をたくさん読みなさい」というのにはちゃんと意味があったのである。健康のためにも久々に本を開いてみるものいいかもしれない。
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2012年07月14日

川端康成の直筆原稿、未発表の小説と確認

茨木市立川端康成文学館(大阪府)が所蔵するノーベル賞作家、川端康成(1899〜1972)の直筆原稿が、未発表の小説であることが確認された。

「星を盗んだ父」と題した短編で、ハンガリーの作家、モルナール・フェレンツ(1878〜1952)の戯曲「リリオム」の翻案。21日から同館で展示される。

同館は1995年に古書店から400字詰め原稿用紙22枚の原稿を購入。これまで、「発表年、発表誌は不詳」としていた。

川端を研究する和洋九段女子中学校・高等学校(東京)教諭の深澤晴美さんが原稿を調べ、編集者の校正の跡がないことから未発表の作品と断定。さらに、原作者名を「フェレンク・モルナー」と表記していることに着目し、この名前で鈴木善太郎訳が出版された24年(大正13年)から、「作者名の表記がおかしい」と築地小劇場が指摘した27年(昭和2年)までに執筆した可能性が高いと絞り込んだ。
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2012年06月27日

LINEに届く小説「トークノベル」誕生

ユーザー数が世界4000万人、国内1800万人を突破した「LINE」――スマートフォンで友人と気軽にコミュニケーションできるツールとして人気を博している同アプリで、“小説”が読めるようになった。NHN Japanは6月27日、LINE向け小説コンテンツ「トークノベル」を発表。第1弾として、LINE向けオリジナル小説「リフレイン」の配信を開始した。

トークノベルは、LINEの「トーク」画面上でストーリーを読み進める小説。「友だち追加」の「公式」にある小説アカウントを「友だち」に設定することで、作品が楽しめる。

小説アカウントにユーザーが話しかけると、少しずつ小説が送られてくる。ユーザーが送る文字は何でもよいが、ストーリーの中で選択肢が出てくる場合は、指定の文字や番号を送ることでストーリーが変化する。

テキストはトーク画面上で見やすいよう短く構成。要所要所で画像も送られてくる。また、シーンによって小説が送られてくる間が変わるなど、メッセージアプリならではの演出もほどこされている。

第1弾のコンテンツとなるリフレインは、恋人の事故死を知らされた主人公が、タイムスリップを通じて「『時間』と『出会いと別れ』を繰り返していくミステリー」だ。
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2012年04月13日

川端康成文学賞に江國香織さん「犬とハモニカ」

昨年の短編ベストワンを選ぶ第38回川端康成文学賞(川端康成記念会主催)に12日、江國香織さん(48)の「犬とハモニカ」(新潮6月号掲載)が選ばれた。

賞金100万円。贈賞式は6月29日、東京・虎ノ門のホテルオークラで。
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2012年04月11日

「本屋大賞2012」が決定−三浦しをんさんの『舟を編む』

全国書店員の投票で選ぶ「本屋大賞2012」の発表会が4月10日、東京・明治記念館で開催され、直木賞作家・三浦しをんさんの小説『舟を編む』(光文社)が大賞に輝いた。

出版社の辞書編集部を舞台に、新しい辞書『大渡海』の編纂(へんさん)に奔走する人々を描いた同作。光文社の女性ファッション誌『CLASSY』の2009年11月号〜2011年7月号に連載され、華々しいファッション雑誌の中で「辞書づくり」という一見地味なテーマを扱ったことで、掲載当時から話題を呼んだ。

単行本の刊行は昨年9月。紀伊國屋書店の書店員が選ぶ「キノベス!2012」で年間1位に輝くなど、発売直後から全国書店員の高い支持を集めていた。

三浦さんは1976年生まれ。就職活動に奮闘する女子大生を描いた『格闘する者に◯(マル)』で2000年にデビューした後、2006年には「便利屋」を舞台にした『まほろ駅前多田便利軒』で直木賞を受賞。さまざまな職業のディティールにこだわった作品を多く執筆していることから、“職業小説”の名手として知られている。

本屋大賞受賞作は例年、映画やドラマなどで映像化されており、リリー・フランキーさんの『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』(2006年受賞作)、湊かなえさんの『告白』(2009年受賞作)など、大ヒットを記録したものもある。昨年も東川篤哉さんの『謎解きはディナーのあとで』(2011年受賞作)がTVドラマ化されたことから、『舟を編む』も映像化のオファーが殺到するものと見られる。

第9回目となる今回は、2010年12月1日〜2011年11月30日に刊行された日本のオリジナル小説が対象。書店員が「いま、一番売りたい本」を3冊投票する一次投票には、過去最高となる全国431書店560人が参加し、上位10作品がノミネートされた。大賞を選ぶ二次投票には全国302書店、371人が参加した。

ノミネート10作品の順位は以下の通り。

■「本屋大賞2012」順位
1位:『舟を編む』三浦しをん(光文社)
2位:『ジェノサイド』高野和明(角川書店)
3位:『ピエタ』大島真寿美(ポプラ社)
4位:『くちびるに歌を』中田永一(小学館)
5位:『人質の朗読会』小川洋子(中央公論新社)
6位:『ユリゴコロ』沼田まほかる(双葉社)
7位:『誰かが足りない』宮下奈都(双葉社)
8位:『ビブリア古書堂の事件手帖』三上延(アスキー・メディアワークス)
9位:『偉大なる、しゅららぼん』万城目学(集英社)
10位:『プリズム』百田尚樹(幻冬舎)
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2012年03月27日

単行本不振…小説、いきなり「文庫」が主戦場

出版不況下で文芸書の単行本の売れ行きが伸び悩む中、出版各社が文庫の充実に力を入れている。既刊作品が文庫化されるスピードが速まり、単行本を経ずに新作を「いきなり」投入するスタイルも広がる。低価格と優れた携帯性が読者に支持されており「小説の主戦場」と化している。(海老沢類)

「仕掛けが早く、本気度が伝わってきた」。東京都内の書店員がそう話すのは、28日から3カ月連続で文庫版が刊行される村上春樹さんの長編小説『1Q84』の宣伝手法だ。出版元の新潮社は、1月初旬に自社サイトで早々と文庫化を予告。4月2日からは山手線などJR東日本の電車内でも15秒の宣伝映像を流す。

単行本は3巻合計で約386万部のミリオンセラー。文庫の第1巻は、事前増刷がかかり前後編各45万部で売り出される。江木裕計(ひろかず)新潮文庫編集部長は「単行本の価格では手が伸びなかった若い読者を取り込みたい」と話す。

講談社は5月に文庫化される川上未映子さんの長編小説『ヘヴン』のために、川上さんの撮り下ろし写真を配した宣伝ポスターを作成中だ。5月の大型連休前に全国2500書店に張り出す。3年前に単行本が出た“旧作”としては異例の仕掛けだが、昨年の販売額が前年比105%という講談社文庫全体の実績も背中を押す。国兼秀二文庫出版部長は「書店で文庫の棚に直行するお客さんにとっては文庫の新刊が新刊。もう、これは(新作の)単行本の売り方ですよね」と話す。

出版科学研究所(東京)によると、平成22年の文庫の販売金額は1309億円で、ピーク(10年)から約5%減った。ただ単行本などを含めた書籍全体はピーク時から約25%も落ち込んでおり、「文庫の健闘ぶりは際立っている」(同研究所)。今年の本屋大賞候補に入った『ビブリア古書堂の事件手帖』(メディアワークス文庫)など“文庫発”のヒット作も珍しくない。このため「面白いものは元気な文庫市場にどんどん出していく」(講談社の国兼さん)という認識が広がり、単行本が出てから3年をめどに文庫に収めるという出版界の慣例も崩れてきた。

集英社は3月、安田依央(いお)さんの小説すばる新人賞受賞作『たぶらかし』を単行本発売から約1年1カ月で文庫化。「4月に映像化が控えているため」だが、鮮度が落ちやすいノンフィクションを除けば、異例の早さといえる。

ベテラン作家も例外ではない。講談社は3月に伊集院静さんの長編『お父やんとオジさん』を約1年9カ月で、昨年10月には五木寛之さんの長編『親鸞』を約1年10カ月で、それぞれ文庫化している。

こうした“前倒し”を推し進めた書き下ろしや、雑誌連載などを単行本を経ずに出す「いきなり文庫」と呼ばれる手法も浸透してきた。集英社文庫から1月に刊行された東野圭吾さんの短編集『歪笑(わいしょう)小説』は昨年11月までに小説誌に掲載された作品を収めた「いきなり文庫」だ。瀧川修編集長は「『早く、より多くの読者に』という著者の意向もあった。雑誌掲載の直後という新鮮さもあって読者の反応はいい」と話す。同文庫は「いきなり文庫」を創刊35年の目玉と位置づけ、ロゴマークも作成。毎月数点ずつ出していくという。

1冊ごとの単価が低い文庫からのスタートに抵抗感を抱く作家もいる。ただ、ある出版社の編集者は「単行本で実績を残せず最終形態の文庫に到達できない作品は数多い。比較的刷り部数の多い文庫で最初に読者に届けるのは作家にとっても悪いチャレンジではない」と指摘する。

文庫で刊行された東野さんの『白銀ジャック』(実業之日本社文庫)が昨年11月に単行本として発売されるなど、慣例とは逆の順序を踏む例も出てきた。

出版ニュース社の清田義昭代表は「文庫はフォーマット(判型)が決まった定期刊行物で、出版社にとっては安く早く出せて書店の棚も確保しやすい利点がある。ただ、多様化を図る場合は『すでに定評のある作品ぞろい』という読者の期待を損なわない微妙なさじ加減が必要だろう」と話している。
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2012年01月06日

第146回『芥川賞・直木賞』候補作決まる

日本文学振興会は6日、第146回芥川賞・直木賞(平成23年度下半期)の候補作を発表した。芥川龍之介賞候補には、5度目のノミネートを果たした田中慎弥氏の『共喰い』など全5作。直木三十五賞候補には、葉室麟氏の時代小説『蜩ノ記』、すでに数々の文学賞を受賞している恩田陸氏のミステリー『夢違』、また真山仁氏が地震と原発事故を背景に“原子力政権”を描いた社会派『コラプティオ』 と幅広いジャンルから全6作を選出。受賞作を決める選考会は17日、今回も東京・築地「新喜楽」にて行われる。

芥川賞候補となった田中氏は、すでに『川端康成文学賞』、『三島由紀夫賞』などを受賞してきた実力派。ノミネート作は性と暴力、土着文化のひずみを綴っている。また初ノミネートとなった吉井磨弥氏の『七月のばか』は、実家の風俗店を手伝う主人公が面接にくる様々な女性達を品定めし、その目を通じて乾いた日常を切り取っており、いずれの作品も閉そく感が漂う。このほか『きなりの雲』の石田千氏と『道化師の蝶』の円城塔氏は前回から引き続きノミネート。『まちなか』の広小路尚祈氏は143回目以来の2度目のノミネートとなった。

直木賞候補には、『夜のピクニック』で『第2回 本屋大賞』と『吉川英治文学賞新人賞』をW受賞して以降、SF、ファンタジーなど着実にキャリアを重ねてきた恩田氏が、ミステリー作品で4度目のノミネート。同じく『日本ミステリー大賞』などを受賞している歌野昌午氏もミステリー『春から夏、やがて冬』で候補に選ばれた。

また5度目のノミネートとなる葉室氏と同じ時代小説のジャンルからは伊東潤氏の『城を噛ませた男』、このほか女性の生き方を描いた桜木紫乃氏の『ラブレス』、元・新聞記者としてのキャリアを持ち実写ドラマ『ハゲタカ』(NHK総合)の原作者としても知られる真山氏の渾身の社会派作品が並ぶ。

芥川賞・直木賞は昭和10年に制定。芥川賞は新聞・雑誌に発表された純文学短編作品、直木賞は新聞・雑誌、単行本で発表された短編および長編の大衆文芸作品を対象に優秀作を選定する。選考委員には芥川賞には宮本輝氏、村上龍氏ら10名。今回で25年間審査員を務めてきた黒川千次氏は引退となる。直木賞は浅田次郎氏や伊集院静氏ら9名で選定を行う。
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2011年10月27日

恋は甘酸っぱいからこそいい? 秋の夜長に読みたい「恋に効く本」

すっかり涼しくなってきて、過ごしやすい日々が増えてきました。テレビやゲームをしてみるのもいいですが、読書はいかがですか? あたたかいお茶を飲みながら、ちょっと寒くなったら布団にくるまりながらする読書は、とっても幸せ気分になるはず! そんな秋の夜長にオススメな本を「恋に効く」という点に絞って働く女子のみなさんに勧めていただきました。

■山本文緒『恋愛中毒』
「『恋はもういい、恋なんてうんざり』と思っている人にも、『恋は甘酸っぱいからこそいい』って思っている人にも読んでほしい小説。恋愛小説でこんなにもページをめくるのがもどかしいような気分になったのは初めて」(28歳/化粧品)

恋なんてしてはならない、私をダメにするだけなんだ……そんな恋愛が中毒化してしまった女性を描くこちらの作品は、恋愛の本質をえぐっているのかもしれません。

■有川浩『阪急電車』
「片道数分の電車の中で起こる、いろんな恋愛の形が描かれています。思わず微笑んでしまうようなかわいい恋、恋の戦争に行ってきた女性、別れを決意しようと葛藤する女性……。どれかひとつは自分と似た恋があって、どこかに自分の恋の答えが見つかるきっかけが落ちている気がします」(29歳/食品)

中谷美紀さん主演で映画化もされた本作。小説が苦手……という人でも、本作のような短編集ならゆっくりのんびりと読み切ることができるかも?

■沖川東横『彼のココロが読み解ける本―7000人を幸せに導いた占い師が伝授!』
「忙しいと彼のことまで思いやる余裕がなくて、放ったらかし気味になっていた私。もう少し彼にとってかわいい女になってみたくて、読んでみました。参考になること、納得ができることが多くてよかった」(28歳/アパレル)

「どうしてメールを返してくれないの?」「最近、そっけなくなってきた理由は?」など女子の不安を狙い撃ちにしてくれます。

■蝶々『小悪魔な女になる方法』
「読めば誰でも小悪魔になれるかと言ったら、もちろんそんなことはないと思うんですが、『モテ女子ってこんなことをしているのかもしれない!』と自分が体験したことがない恋愛の世界をのぞいた気になりました。恋愛の形は自分が知っているものだけじゃない……と」(24歳/教育)

小悪魔な女子というのは、なろうと思ってなれるものではないですよね……。

過ごしやすいこの時期は、集中力も増します。恋に効く本を読んで、恋に備えておいてはいかが?
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2011年08月03日

お風呂で読むための“小説付き入浴剤”

一日の仕事を終えて、楽しみなのは入浴。シャワーで済ませるのではなくて、湯船にザブンと入りたい。疲れをガッツリ洗い流したいのだ。
その際、浴室内では意外とダラダラする。物思いにふけったり、はたまた本を読んでみたり……。

だからこそ、8月3日にバンダイより発売されるアイテムが手っ取り早いのだ。角川書店とのコラボで製作されたという『ほっと文庫』は、人気作家の書き下ろし作品1冊と入浴剤1包がセットになった商品。
まさに、「お風呂に入りながら、この本で楽しんでください」と言わんばかりのカップリングではないか。

そこでバンダイに、角川書店とのコラボの経緯を伺ってみた。
「最近、入浴時間を有効に活用する方は多いですよね。お風呂の中で音楽を聴き、本を読む方が増えていると聞いております。当社はそこに注目し、“入浴剤”と“本”をセットにしたものを作ってみたいと考えました」(同社・担当者)

そして、作品を書いてくれた作家陣がスゴいのだ。赤川次郎、あさのあつこ、有川浩、桐生操、西加奈子、森見登美彦といった面々が、この入浴剤のために30ページほどの短編を書き下ろしてくれている。
実は、このページ数にも理由があるという。
「一般的に、半身浴したときの入浴時間は30分。その間で読み切ることができる長さとして、作品を30ページ前後にいたしました」(担当者)

面白いのは、それぞれの作品に「色」と「香り」が必ず登場しているということ。そして当然、同封された入浴剤も同じ「色」と「香り」にしてある。
赤川次郎の『三毛猫はジャスミンの香りがお好き』には、ジャスミンの香りがする白の入浴剤を。有川浩の『ゆず、香る』には、高知県馬路村のゆずの香りがする黄色の入浴剤を同封した。
「入浴中もストーリーの世界観に浸っていただき、お風呂の時間をさらにお楽しみいただきたいです」(担当者)

浸らせていただきましょう! 早速、『ほっと文庫』を取り寄せて半身浴してみました。
今回、利用したのは西加奈子氏の『はつみつ色の』という作品。これは当然、ハチミツの香り漂う入浴剤が同封されている。そんなお風呂に入ってみたい気分だったんです。

まず、湯船に入浴剤を投入してみる。すると、お湯は鮮やかなオレンジ色に。これも、ハチミツをイメージしているのだろうか? そして、香りがも〜う、甘い香り! まさに、ハチミツ!! こんな環境の中、小説世界に入り込んでみたいと思います……。

……約30分後。この小説、めっちゃ面白い! 短編だと思って、実はそこまで期待していなかった自分を叱ってやりたい。大人に読んでもらいたい、かなりウィットに富んだストーリーで。
ちなみに、ハチミツの香り理由は……。それは読んでからのお楽しみなのだが、嗅覚からも主人公と同様のシチュエーションを疑似体験させてくれる、そんな入浴剤となっている。“文”と“香り”で、30分間の小旅行に誘ってくれているというか。

それにしても、このシリーズの他の短編も実に読んでみたい! だからこそ、次回の入浴タイムが楽しみで仕方なくなっている自分。あと、残すは5作品か……。
現実的な話をすると半身浴として丁度良い時間内に読了できるし、ある意味入浴剤の革命だと思う。

そんな『ほっと文庫』は、全国のドラッグストア、量販店、スーパーマーケット、一部の書店等で販売される。価格は各399円(税込み)。

「幅広く皆様に使っていただきたいと考えてはおりますが、20〜30代の女性が中心になるのかなとは思っています」(担当者)
なるほど。ただ、私としては、活字離れ著しい中高生に体験していただきたい。敷居は低いが、奥は深い。そんな活字体験を、この入浴剤は味あわせてくれるはずだから。
また、浴室は他に誘惑もないので、読書に没頭させてくれます。
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2011年06月07日

〈探偵ガリレオ〉最新刊登場

〈探偵ガリレオ〉シリーズの最新長編が刊行された。『真夏の方程式』である。シリーズ作品としては6冊目、長編では3冊目となる。「週刊文春」連載時から、単行本化を楽しみにしていた読者も多いことだろう。〈探偵ガリレオ〉こと湯川学の活躍を、また本で読むことができる。

今回の舞台は風光明媚な海辺の町、玻璃ヶ浦である。帝都大学の物理学研究室を離れて湯川がこの地にやってきたのは、玻璃ヶ浦の沖合いの海底にレアメタルを含む鉱脈が見つかり、資源開発の計画が発足したためだ。海は水産業の舞台であり、観光都市としての資源でもある。当然住民からは自然破壊を危惧する声も上がり、計画が環境に与える影響を評価することが求められた。そのための調査において湯川の提案した手法が採用されることになり、現地まで足を伸ばすことになったのである。

今回の特筆すべき点は、湯川と、ある少年との交流が描かれていることである。小学校5年生の柄崎恭平は、夏休みの一期間を親戚が経営する旅館で過ごすために玻璃ヶ浦へやってきた。往路の電車の中で、偶然彼は湯川と知り合ったのである。招聘元の企業に借りを作りたくないといって、湯川は恭平の泊まる旅館を滞在先に決める。

湯川と子供、という取り合わせに意外さを覚える人もいるだろう。わざわざ時間を割いて子供の相手をしている湯川というのも、想像がしにくいかもしれない。しかし、一旦かかわりを持ったあとは、湯川は驚くほど真摯に、恭平に接しようとするのである。探偵ガリレオの、意外な一面を見た思いがする。

恭平に対して発された、湯川の言葉を聞いていただきたい。

「お金に繋がらないってところが。僕だったらやる気が出ないな。大体、理科って苦手なんだよね。あれって何か役に立つのかな。ねえ、科学の研究って楽しい?」
「この上なくね。君は科学の楽しさを知らないだけだ。この世は謎に満ちあふれている。ほんの些細な謎であっても、それを自分の力で解明できた時の歓びは、ほかの何物にもかえがたい」

恭平は、さまざまな理由が重なりあって、世の中に対してしらけた気持ちを持っている子供だ。湯川は、彼に世界の真の姿を見せるため、科学者としての知識と能力を用いるのである。ペットボトルと携帯電話を使って行った実験が、恭平のかたくなな心を溶かす。一つの出会い、一つの発見が、誰かの人生を変える。この世には、そうした魔法のような出来事が、ごくまれに起きうるのだ。そうした場面を、作者は湯川学という偏屈な物理学者の存在に託して描いた。

〈探偵ガリレオ〉の名を世間に広く知らしめた第1長編『容疑者xの献身』(文春文庫)では、物語の背景に格差社会の現状が描かれていた。本書でも同様に、この社会のありようが物語に大きく影響している。海底資源開発をめぐり、玻璃ヶ浦の町は推進と反対の二派に分裂する。その中では、理性的な話し合いができない雰囲気が高まっていくのだ。極論と極論がぶつかりあう窮屈さは、わが国の現状をカリカチュアとして描いたもののようである。本書の雑誌連載時にはまだ東日本大震災は起きておらず、原子力発電所の危険性も一般には意識されていなかった。だが、3月11日以降に勃発した

「安全」と「科学神話」を巡る論争が、私には本書で行われている議論に重なって見えた。ミステリーとしての側面を紹介するのが遅くなった。湯川が町に到着した日、住民を対象にした説明会が開催された。そこにはなぜか、玻璃ヶ浦とは縁もゆかりもない人物が紛れ込んでいたのだ。湯川と同じ旅館に投宿したその人物は、翌日変死体として発見される。警察当局は事故死という見解を発表するが、塚原という死者の素性が意外なものであったことから事態が一変する。彼は警視庁に属し、警視の階級にまで昇った元警察官だったのである。その人物がなぜ、玻璃ヶ浦にやってきて命を落とすことになったのか。警視庁内部の塚原をよく知る者から、捜査一課の刑事、草薙と内海に極秘裏の捜査指令が出た。草薙は現地にいる湯川に連絡をとり、真相究明の依頼を行う。

一見結びつきそうにない出来事の間に存在する、見えない糸。それを探っていくところに、『真夏の方程式』の謎解き小説としての醍醐味がある。それに、過去の2長編と同様の、大胆なトリックによって不可思議な状況が作り出されるという、虚構の世界ならではの楽しみが加わるのだ。小説としての美しさは、そうしたミステリーの仕掛けが、玻璃ヶ浦で起きている事態と深いところで密接に結びつけられている点にある。恭平という年少の登場人物を配したこと、町が環境破壊という問題によって大きく揺らいでいること、そうした要素が、すべて真相に結びついていくのだ。ミステリーとして優れているのと同時に、小説として豊かである。楽しませてもらいました。
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2011年05月05日

芥川龍之介「蜘蛛の糸」平幹二朗主演で映画化

芥川龍之介の代表作「蜘蛛(くも)の糸」が映画化され、俳優の平幹二朗(77)が主演する。同作の映像化は初めてで、平のスクリーン主演は1977年の「錆(さ)びた炎」以来34年ぶり。太宰治の「斜陽」や幸田露伴の「五重塔」など数多くの文芸作品を手掛けてきた秋原正俊監督がメガホンを取る。10月公開予定。

「蜘蛛の糸」はお釈迦(しゃか)様が垂らしたクモの糸をたぐり、地獄から逃れようとした罪人カンダタの哀れを描いた小説。映画は現実社会で香典を盗んだ直後、事故死したカンダタが黄泉(よみ)の国で、なぜ香典を盗んだのか過去を振り返る形で物語が展開。すべてが明らかになった時、天国からクモの糸が垂れてくるという物語だ。

文芸作品の主演にふさわしい重厚感と、人間味あふれる演技力を買われた平は「舞台を中心に活動してきましたが、カメラは現在の自分を客観的に映してくれる。この年になって、映像として残る映画で自分を見てみたいと思うようになりました」とオファーを受けた理由を説明。「カンダタをどう演じるか。これから考えながら、役作りをしていくのが大変楽しみ」と意気込んでいる。

また、女優の高畑淳子(56)と長女こと美(24)が初共演。劇中でも母娘役を演じる。映画初出演のこと美は「役者“高畑淳子”はなんの手加減もなくぶつかってくるでしょうから、こちらも容赦なくそれに応えようとワクワクしています」と話している。
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2011年02月18日

「真摯に野蛮に書く」授賞式で芥川賞・朝吹さん

第144回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)の授賞式が18日、東京・丸の内の東京会館で開かれた。

中学校卒で元フリーターの芥川賞受賞者として話題を呼ぶ西村賢太さん(43)は「うれしさもありますが、変わらず同じようなものを書いてゆきたい」と語った。同時受賞者で慶応大学大学院生の朝吹真理子さん(26)は「今、長編小説を書いています。毎日、真摯(しんし)に野蛮に書いてまいりたいと思います」と丁寧に話した。

共に新潮社から刊行された単行本は、西村さんの「苦役列車」が19万部、朝吹さんの「きことわ」が14万部に達した。受賞作を転載した月刊誌「文芸春秋」3月号も増刷を決め、80万部。増刷は綿矢りさ、金原ひとみの両氏が受賞した2004年3月号以来という。

直木賞は、木内昇さん(43)の「漂砂のうたう」(集英社)、道尾秀介さん(35)の「月と蟹」(文芸春秋)が受賞した。

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2011年02月09日

ケータイ小説No.1が決定「第4回iらんど大賞」発表

1月26日に『第4回 iらんど大賞』ケータイ小説部門の受賞作品が決定しました。最優秀賞は『お女ヤン!! 5』(岬・著)。2月25日にアスキー・メディアワークスより書籍が発売されることが決まっており、賞金50万円も贈られました。

これまで『携帯彼氏』『激恋』などの人気作を世に出してきた同賞。月間ページビューが35億を超える日本最大級のケータイ小説サイト「魔法のi らんど」が発表する賞とあって、今回の投票対象作品は約200万。10代から20代前半のいわゆる「ケータイ世代」を中心とした読者の投票をもとに年間ナンバーワンが決定しました。

『お女ヤン!! 5』の主人公は、学校では“超お嬢様”だが、じつは男勝りでガサツな女子高生。本性が他校の不良男子にばれたことから始まるラブコメディです。この作品を書き始めたのは、「実家での夏休みの暇つぶし」だったという著者。「最優秀という素晴らしすぎる賞をいただけた事が本当に本当に信じられません」と喜びのコメントを発表しました。

7つすべての受賞作の書籍化が予定されていますが、「NHK賞」は今夏ドラマ化のご褒美も。受賞したのは『金魚倶楽部』で、著者の椿ハナは「ピュアクラブ部門賞」(『崩れかけのプロポーズ』)とのダブル受賞となりました。

その他受賞作は以下のとおり。「泣ける部門賞」『たった15分』(エリ・著)、「切ない部門賞」『Love Letter』(りん・著)、「ノンフィクション部門賞」『to You・・・』(朋美・著)、『ずっと、大切な人』(あい・著)。

独自の文化を築いてきたケータイ小説。本格的な電子書籍時代を迎えて、どんな進化を遂げていくのか、興味を覚えるところです。
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